読書感想文「空の拳(角田光代)」

直木賞を受賞した人気女性作家の角田光代が、描いたボクシングの小説である。角田光代の作品は、女性を主人公にしたものが多く、またそれらが代表作になっているのだが、今作は珍しく男性を主人公にしている作品である。角田光代の作品は、女性が主人公という固定観念が多少あったが、その意味では読書の意表を突いたように感じる。

 

主人公は出版会社の男性で、主な脇役はボクサーの男性たちが多い。今までの角田作品とは、かなり作風が違うので、彼女の小説の別の一面を見られた気がする。話の重要な部分は、ボクシングの試合の描写になるだろう。ボクシングの試合を文章で表現することは、難しいように感じるが、角田光代は丁寧にボクシングの試合を描いている印象である。

 

 

 

しかし、丁寧に表現しているのではあるが、退屈に思える部分もある。ボクサーの試合の描写が、この小説の好き嫌いを大きく分けることになるだろう。個人的には、試合の描写は可もなく不可もなく描けているように思える。それは、角田光代自身も長年ボクシングのジムに通っており、ボクシングについて詳しいからであろう。

 

ただ、角田光代の作風は、アクションや冒険活劇とは違うものだとも感じるので、試合の描写は必ずしも上手く描けていないようにも感じた。それで、可もなく不可もないという感想になったのである。ボクシングの試合以外では、角田光代がおそらく初めて描く、主人公をはじめとした男性たちの描写が、見どころになるであろう。

 

これも、角田光代がボクシングジムに通っていて目にした、男性のボクサーたちが元になっているのであろう。男性たちの描写は、かなり丁寧に描いているように思える。丁寧に描くことで、それぞれの人物像はかなりしっかりしたものになっている。女性作家が描く、ボクシング関係者の男性たちがどのようなものかが、この小説のテーマの一つになっているかもしれない。

 

しかし、難点を挙げるとすると、男性の人物描写にかなり字数を使い過ぎているように思える。この辺りは内容をある程度、端折ったほうがスッキリした文章になったように思える。ともかく、流行作家の新たな一面を見られる小説である。続編があるようなので興味が惹かれる

 

(40代男性)

 

 

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