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読書感想文「ざわつく女心は上の空(こかじさら)」

これは、榎本さわこをキーにしたどこにでも存在しそうな6名の女性の心情が綴られており、読み終えると「何とかならないのだろうか?」と案じられてしまう小説である。 フードコーディネーターを目指しキャリアを積んできた美香子の心のざわつきは、さわこに人気料理研究家として先を越されてしまった事によって発生する。
 
家庭的な雰囲気に憧れてさわこに傾倒するようになった雪乃の心のざわつきは、大切な人のためではなくSNSへ投稿するために料理につぎ込んでいると指摘された事だ。また、以前ママ友であった智恵子には、パート労働の1ヶ月分の給料がさわこのテレビ出演料1回分よりも下回る事への心のざわつきがある。
 
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さわこの母の和枝でさえも、上から目線になったさわこの成功を喜べない心のざわつきがあり、さわこの娘の岬でさえも、キッチンスタジオを備えた豪邸で母との会話が無くなった事への心のざわつきがある。自分はどの人物に似ているだろう?以前は、結婚や仕事の現実がわかっていなかった雪乃のようなタイプだったかもしれないが、今は家計のやりくりするに苦労する智恵子にかなり親近感が湧く。
 
この小説を読む様々な女性が、それぞれの立場で共感できそうな女性が出てくる所が読みやすい秘訣である。 さわここと榎本佐和子が、平凡でのんびりした主婦であったにも関わらず、料理雑誌の代役で人気を得て自己中心的になっていく所は、同じ主婦としていたたまれない思いがある。
 
夫や子供が家を避けるようになって帰宅が遅いと、家族に対して料理を作らない事に罪悪感は無くなるのだろうか?息子がカップ麺を一人ベランダで食べていても、メディアに「家族が大事と」連発できるのだろうか?最初は代役をためらっていただけに、佐和子がさわこへ変化した影響力を恐ろしく感じる。 佐和子がとうとう夫の不倫や家族の離散が原因で仕事を一切失う姿は、栄枯盛衰の理を感じる所だ。すぐにでも豪邸を売って家族でやり直しができないのかと思う。
 
しかし驚いたことに佐和子は、智恵子の同情を込めたおにぎりや母からの宅配便を受け取って感じ入っても、キッチンスタジオに立つことを諦めてはいないのだ。一人ハンバーグをこねる姿は、家族が元に戻れない状況を決定付けたようで不憫である。 自分も仕事や家事で時間に追われる時は、子供に岬のような思いをさせているかもしれない。
 
子供が成長して自分と異なった価値観を持ち始めた時は、和枝のように子供に対してざわつきを感じるかもしれない。マスコミにスキャンダルを漏らしてまで佐和子に目を覚まして欲しかった岬が、「わたし、何か悪いことしたかな?」としか思わない所は、家庭を持つ読み手として他人事ではなく、警告のような印象が強く残ったのである。
 
(40代女性)
 
 
 

ざわつく女心は上の空
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