読書感想文「砂上(桜木紫乃)」

この小説「砂上」はテレビで直木賞作家の本谷有希子さんが「最近一番熱中して読んだ本」とコメントしていたので気になっていて、それがきっかけで読んでみた本であった。この本は「ホテルローヤル」で直木賞を受賞した桜木紫乃さんの著書だ。あらすじは、主人公の玲央は10年以上書き続けてきた小説がある。

 

それは自分自身の身の上話をモチーフとした小説で、まだ学生の頃に生んだ娘が自分の妹として一緒に暮らしているというテーマで書き続け、毎年文学賞に応募しては落選していた小説だ。玲央は、40代で独身。離婚歴がある。北海道江別市の実家で幼馴染が営むビストロでパート勤務をしており、別れた夫から慰謝料として毎月5万円を受け取っていた。それを合算しても11万円ほどしかなく実家に住まわせてもらってギリギリ生活できる状態である。

 

ある日、編集者の小川乙三という女性が訪ねてくる。玲央が応募した作品の出版社の編集者だった。乙三という編集者は玲央にこれまでと同じテーマの小説「砂上」を完成させることを勧め、その割には終始、コテンパンに玲央の書いた作品の欠点をあげつらうのであった。そして、それは文章だけでなく玲央本人の資質にまで「主体性のない性格は文書にあらわれる」と揶揄し、「あなたは心底傷ついたこともなく生きてきた人間」と言い放つ。

 

そしてこのハードカバー1冊分にわたって主人公玲央が反芻して意識して「自分は主体性のない人間なのだろうか」と自問自答していく。この小説は玲央の母ミオがすでに亡くなってしまってから始まる。水商売をし大柄で太っていて明るい太っ腹だった母親。玲央が今は妹として育てられている美利を身ごもったとき、母は「産んじゃいなよ。私の娘として育てるからさ。」とだけ言って相手の男が誰かを一切聞かぬまま亡くなってしまった。

 

 

 

本当はどう思っていたのだろうとか、あまりうまくいっていない美利との関係などを考えて玲央は小説を書いていく。浮気をして「君とは暮らせない」と言って別れた夫に浮気相手との子供が出来ることになり、毎月の5万円を減らしてほしいと言われてしまう。今でもギリギリの生活なのにどうしようと一応は考えるのですが、乙三が言うようにやっぱりどこか他人事のように感じていた。

 

金欠になって実家に戻ってきた娘の(妹ということになっている)美利にも、私は関係ないみたいないつも第三者きどりのあんたがムカつくというようなことを言われてしまう。その後、玲央は何度も何度も小説を書きなおし、ビストロで働きながらも休憩時間や仕事から帰宅してからずっと小説を書いた。書くことに熱中し、のめり込み、美利からも「玲央変わったね」と言われるようになり、美利が自分を生んだのが玲央だということも実は知っていたということを知り、徐々に変わっていく。

 

自分から行動を起こさない、面倒ごとから逃げる主体性のない性格だった玲央だったが、美利から元旦那に決定的に嫌われてもいいからもらうものはもらっておくべきと忠告され、のちに振り込まれた金額が1万円になったとき、元旦那に徹底的に冷酷に鬼となって手切れ金の100万円を請求するのであった。私もお金はやっぱり大切だと思った。玲央は本当は美利の母親であるのに、あんまり美利への母性というか愛情が感じられなかった。

 

元旦那へお金を請求することについても美利からの忠告ですし、ラストで玲央の書いた「砂上」が無事に書籍化されたときも、美利に「ドライブに行きたい」とリクエストしていた。仲が良くなったのはいいことだが、終始玲央が美利を精神的に頼っていた印象を持った。自分は母であり、この子を守ろうとか何とかしてあげようというより、助けてほしいと自分が思っているように感じた。

 

結局、主人公の玲央はずっと自分の出産について未消化な感情があって、それを小説で昇華出来たというようなお話だったと思う。その中で、自身の性格や母親への感情や娘美利への感情などいろいろ昇華出来たのだろうと思う。ラストでは無事書籍化されることが決定した玲央ですが、ビストロはクビになってしまい、乙三から小説だけで生活できませんよと忠告される。早急に新しい職を探してくださいねと言われる。でも、ラストは希望に満ちた気持ちの主人公だったからきっとハッピーエンドのお話だったんだと思った。

 

(40代女性)

 

 

 

 

 

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