読書感想文「青の数学(王城夕紀)」

数学少年、栢山には数学をやり続ける理由がなかった。幼いころに出会った数学者、柊との約束。「数学をやり続ける」。それ以外に理由を持たなかった栢山は、雪の日、数学オリンピック優勝者、京香凜に「数学って、何?」と問われ、一つの賭けに出る。数学がやり続けるに値するかどうか。数学は一つのギャンブルと同じだ。勝てば、たった一つ答えを見つければ、後世にまで語り継がれる偉人になれる、奥底に沈む真理にたどり着ける。

 

負ければ、答えを見つけられなければ、自分の人生を失うことになる。そのくせ、答えははるか、気の遠くなるほど遠くにある。それでも、少年少女たちは、それぞれに理由を持って、若い数学者が集まるサイト上の空間で決闘を繰り返す。栢山の所属する数学研究会の部員、七加は幼いころから数学が好きだった。だから、数学を続ける。けれど彼女には、数学の才能がない。全国トップクラスの私立校、偕成学園の数学研究会「オイラー倶楽部」の一年生、庭瀬にとって数学は自分が成り上がるための道具だ。

 

 

 

そのためなら、敵の心を折ることすら躊躇わない。けれど、今の実力でも届かないほどに頂は高くそびえ立つ。栢山の戦友、新開は行けるところまでどこまでも行きたい。けれど、彼に行けない場所に行ける同い年の人たちがいる。彼は才能という言葉が嫌いだ。不敗の少女、五十鈴にとって、数学はどこまでも美しいものだ。そこに、決闘なんて醜いものはいらない。それでも、受けた決闘を彼女は拒めずにいる。

 

彼らの数学への思いはどこまで熱くて、純粋だ。誰もが数学の可能性を信じている。それでも答えが必ず分かるという保証はどこにもない。なのに、彼らは数学の海へと潜り続ける。なぜ、彼らはそうまでしてひたむきになれるのだろう。それはきっと、私たちが少年だったころに持っていた、今は忘れてしまった理由。いつまで、彼らは数学に純粋でいられるだろう。その時がきっと、彼らが大人になった時。その上で、彼らはどう、数学に向き合っていくのだろう。彼らにとって数学は、たった一度きりの青春なのである。

 

(10代男性)

 

 

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