「武士道 ビギナーズ 日本の思想」の読書感想文
戦後続いてきた道徳が,いよいよ公立学校で教科化され,特別の教科道徳となる。教科化にはそれなりの根拠がることだろうが,教科化したからといって,本当にその効果は期待できるのだろうか。
それよりもむしろ,日本の道徳の原点をしっかり学ぶ必要があると感じる。そう感じたのは,新渡戸稲造の「武士道」を読んだからである。
これから教科化となる道徳を導く教師はもちろんのこと,指導者や管理職,経営者は,せめて1回はこの「武士道」を読んだ上で,それぞれの役職を全うしていただきたいと思う。
それほどこの本は,日本人のもつ歴史的な道徳的価値観を伝えてくれ,日本人としてもつべき品格を明確にしてくれている。特に,「武士道」に流れる原点はあらゆる宗派を包含し,それを実践してきた日本人の誇りともいえるものである。
決して力の弱いものをいじめず,力あるものには果敢に向かっていき,正義を貫き通す。そして,卑怯者や臆病者という言葉を心から忌み嫌い,まっすぐに生きていくことこそを人生の核におく。
この「武士道」こそが,人として究極に目指していかなければならない道標であり生き様なのである。この本を読み終え,「武士道」の精神に出会い,ひたすら驚愕を覚えた。
何と自分は無様な生き方をしてきたことか,いかに卑怯者とののしられるような言動をしてきたことか。自省の念にかられる一方で,本当に「武士道」の精神を貫き通すことができるのか,しばらく呆然と自問し続けたものである。
この本には,様々な宗派との関連だけでなく,定義することの難解な「礼」や「正義」「忠誠」の誕生と経緯がこと細かく記述されている。まさに,道徳の教科書である。この本を読まずして,道徳は語れない。
そして,他文化共生,情報過多社会になっていく世界の中の日本で,ますます「武士道」の精神が消滅しようとしている現在,人が人として営んでいく原点をしっかりと確かめるためにも,この「武士道」は珠玉の一冊である。
私は,「武士道」の精神を絶やさないために生きていきたい一人である。
(50代男性)
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