読書感想文「真夜中のパン屋さん 午前2時の転校生(大沼紀子)」

謎だらけの展開で出だしから面食らってしまった。希実の学校に転校してきた人形を持った少年の怪しさは色々な今後を想像してしまったし、読んでいる間自分の脳みそがフル回転している感覚だった。読んでいると誰かの過去のエピソードを絡めているなということは分かったが、そのエピソードがどう絡んでくるのか全く予想がつかなかった。最後にエピソードの主が明かされた時はスッキリして、もう一度初めから読みたくなってしまった。
 
そして「パン屋さん」とタイトルに入れているだけあって、食べ物の描写も目が離せない。コーヒー好き、パン好きな私にはたまらない。「こっくり」と表現されたフルーツサンドは実に美味しそうで実際に自分もブランジェリークレバヤシに行ってパンを沢山購入したい衝動に駆られる。フルーツサンドを味見した希実が心底羨ましい。そして随所にコーヒを入れる描写もあり、熱々のコーヒーの香りがすぐそこまで漂ってくるようだった。
 

 
ジョロジョロといった独特の音も面白いと思った。美味しいパンとコーヒーがある、ブランジェリークレバヤシのようなお店が近くにあったら、入り浸る自信がある。また、以前から「真夜中のパン屋」シリーズに登場しているこだま・織絵親子の成長も微笑ましい。母親とは決して言えなかった織江が母らしくなり、こだまが嬉しそうにしている姿はこちらもつい想像して笑ってしまうほどだ。ソフィアさんも相変わらずで実際にこんな人いそうだなと思いながら読んだ。
 
世話好きで男好きで口はキツイけど憎めない感じ。こんな人達に囲まれた希実は不幸なんかじゃ全然なくて、幸せなんじゃないかと思った。「午前2時の転校生」は序盤から盛り上がって、最後までその熱が続いていたので読みやすかった。今回も温かい登場人物ばかりで本当に悪い人は一人もいなかったので、ハラハラしながらも安心して読めた。普通とはちょっと違う境遇に置かれた人たちの、幸せになろうとするパワーって凄いと圧倒された。
 
(30代女性)
 
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