読書感想文「イノセント・デイズ(早見和真)」

ある女死刑囚の知られざる過去となぜ死刑にならなくてはいけないほどの罪を犯してしまったのか。様々な人の視点からストーリーを紐解いていく小説である。まず主人公は死刑囚の田中幸乃。世間では事件をきっかけにマスコミなどにも取り上げられ「整形シンデレラ」という異名までつけられる。その罪はというと放火殺人。しかも元彼に対するストーカーという残虐な殺人での死刑判決。それだけ見ると死刑になっても当然の罪を犯したのではないかと思ってしまう。しかし本当に幸乃は放火殺人を犯したのか?無実の罪で誰かをかばっているのではないか?そんな疑問と雪乃の無実を信じて審判の最後の最後まで信じようとする一人の青年「シンちゃん」。彼の存在は死にゆく雪乃にとって最後の救いの一つとなっていたのである・・・ まず雪乃の生い立ちがなかなか辛い。母は17歳という若さで子供を産み、しかも水商売をしていて、義父には虐待されて育つという辛い幼少期を過ごしす。それは事件をきっかけにたくさん報道されることになる。

まぁどこの世界でもこういう性格の話はマスコミの格好の餌食なのだ。そんな幼少期だったことも手伝って雪乃は誰かに愛されたい、誰かの必要とされたいという気持ちが強くなっていく。それが時には間違った方向に進み友達のいいなりになってしまうことに。今の若い学生さんたちも同じような経験をしているのではないかなぁと読んでいて思った。昨今のSNSブームは便利な反面いじめや上下関係の優劣が容易につきやすい。いいのか悪いのかは別として課題の一つだと再考させられた。さて、話を戻すと雪乃はある「事件」の身代わりになる。放火殺人。正確に言うとバカ騒ぎを注意された若者の放火だ。それがたまたま雪乃の元カレの家族がくらいしているアパートの一室で、失恋して憔悴した雪乃がたまたまそこにいたのだ。様々な思いの葛藤と生に対する絶望が相まって誰に言われるでもなく罪を自らかぶり死刑になることを選ぶ雪乃。雪乃の心の描写は計り知れなく悲しく切ないが、最後の唯一の味方である「シンちゃん」との心のふれあいだけがこのストーリーの救いなのだ。かなり悲しい小説ではあるが心を動かすものがありしばらく余韻に浸ってしまう。

 

(30代男性)

 

 

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