読書感想文「猿神のロスト・シティ―地上最後の秘境に眠る謎の文明を探せ(ダグラス・プレストン)」

本作はノンフェクションで、21世紀に実際にあった冒険と、明かされた偉大な謎の文明について書いてある。殺人事件発生率世界一位と治安が極度に悪いのが最大の特徴で、それゆえ研究者やジャーナリストも足を踏み込みがたい南米ホンジュラスには、500年前から伝わる謎の古代文明の都市の遺跡、「猿人王国」または「白い都市」などと呼ばれた遺跡の伝説があった。しかし国情に加え、人跡未踏の熱帯雨林の奥地に位置し場所の特定もされていない状況でもあり、500年前から多くの探検家や実業家が探索に繰り出したものの、ことごとく挫折してきた。本作で取り上げられた一連の冒険がなければおそらく今も、伝説のままだっただろう。ロストシティの解明に役立ったのは、アメリカ航空宇宙局(NASA)の試み。密生したジャングルの下に眠るものを探すため精工な地形表示レーダーを搭載した飛行機を飛ばし見つけようというもの。この最新技術と、本書の作者でジャーナリストのダグラス氏らの一連の試みがあり、「猿人王国」は現代によみがえることができた。その実態は伝説通り、マヤやアステカ文明に匹敵するような一大文明であり、またそこへ到達するには映画や小説のような冒険があった。よみがえった偉大な古代文明はまた、人類に脅威の警告を突き付けた。

それはそれほどの文明が、大都市が短期間で文字通り「滅亡」してしまったという恐ろしい事実である。原因は伝染病であった。現在の先進国の基準において、かつて人類に大量死をもたらしたさまざまな伝染病の大半は過去のもの、すでに克服したか、存在はするものの遠い場所にあるものといったところ。猿人王国が滅びたのは「新世界」を求めて訪れたヨーロッパ人が持ち込んだ天然痘のせいだが、それもやはり過去のもの・・・ではなさそうだ。南米を侵食し甚大な被害、一説によると猿人王国は人口の9割を失ったとされる被害は、新世界で「進化」した天然痘によるもの。人が進化するように、これらも進化し変質する。現代文明も、本当にこれらに対抗できるのだろうか。現に、ダグラス以下探索チームの一部は、この変性し猿人王国滅亡後も生き残っていた病原体に襲われ数人は重症化し、長い療養生活と原因不明の症状の数々に見舞われることになったのだから。さて、感想としては素直に、現代においても未踏世界や知られざるものが残っていて、解明に向けた調査や冒険が続いていることへの感動がひとつ。これはもう、人の心を豊かに、国籍問わず人類に最高レベルのエンターテイメントを与える事実である。もうひとつは、「脅威」の方に関する怖さ。人類にとって、まだまだ恐ろしいものがあるのだという事実を認識したことへの感想である。最近読んだ本の中で、分野の垣根を越えて一番面白かった。

 

(30代男性)

 

 

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