バーベキューでの疎外感のシーンはとても共感できることが多々あった。なかなか直接的に言葉に表せない微妙な心境を言い表していて自分の中の嫌な思い出が当時の気持ちと一緒にありありと思い出された。そんなことは通常フィクションを読んでいて滅多にないことなので凄い読書体験。地下へ続くぽっかりと大きな穴が口を開けているという不気味な表現が駐車場だとわかるまでに一瞬かかる。そこからの不安な感じがすごい。たしかにはじめての駐車場はどこまでこの通路が続くのかと心配になる。そこから人を殺してしまったり、人間とも動物ともつかないグロテスクなひょっとこが登場してとにかく不快。一度出たら元に戻れない非常階段の扉は経験がある。あの絶望感は他にない。
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このときはまだ相棒の犬がいるから心強いけどこの先はぐれてしまうのでなお心細くなる。でももともと俺がお前でお前が俺という設定だったとしてもこのトンネル的な非常階段を通ることで入れ替わり的な何かが起こったような気がし、ターニングポイント的な面白さがあった。この作家は感じたことの比喩表現をそのまま事象として書くことがある気がする。繊細というか大袈裟というか。例えば、船木陶子が老いぼれて小さくなるという描写、まるで箱に入ってしまうくらい小さく感じるというようなところをそのまま箱に閉じ込めるということにして話を進めるのがファンタジックで面白い。時空間が歪んでありえない扉から海へと続くのは非現実的でわくわくする。偽善がテーマとしてずっとあるので身につまされる思いがした。そんな空虚な構造が崩壊する物語が痛快である。ラストシーンの正体が発覚するクライマックスはいくつかの映画でも見かけたことがあるけど驚きが止まらない。ボートを漕ぐのは犬の姿で想像して読んだがとても美しく物悲しい、特に私たちを救ってください号というネーミングが涙を誘った。登場人物の名前は見たこともない漢字が多く調べながら読んで楽しかった。
(20代女性)
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