読書感想文「星の王子さま – The Little Prince(サン・テグジュペリ)」

概念を具現化するためには、言葉や文で表す以外方法がない。『大切なものは目には見えない』なんてありふれた言葉であろうか。しかし、今でこそありふれていると思われるこの概念が、この世界に広まった一つの要因が、概念を文章として著してくれたこの本なのである。概念を文字にすることで、それを具現化したのだ。

 

王子さまと星の住人達との出会いは、私達地球の人々に、特に、本当に大切なものが何かを忘れてしまった大人達に、様々なことを教えてくれる。美しいものの中には、目には見えない何かが隠されている。隠されているから、美しいのである。これは王子さまが、一輪のバラを星に残してきてしまったことで気づいた概念であるが、私もこれには大変共感した。

 

私の一番の親友が、現在アメリカのある街に住んでいる。私はその街に訪れたことは無いのだが、とても有名で、日本人にも人気の観光地でもあるため、テレビや雑誌でその街の名前をよく目にする。そのたびに私は、胸がキュンとする。私はメディアでしかその街の情報を知らないが、絶対に素敵な街だと知っている。

 

それは、私の大事な親友が、その街に隠れているからである。きっと、私の隣で同じテレビを見ている夫には、その街は私が感じるほどキラキラしているようには見えないだろう。私が思うほど、素敵で魅力的な街には感じないだろう。それは、私の夫にとって大事なものを、その街は隠していないからである。そして、私自身、彼にはその事を特に伝えていない。その街に隠されたものは私だけのものであり、具現化されていないのだ。したがって、その街には夫にとっての、砂漠の中の井戸はないのだ。

 

私の家にはルールがある。ありがとうと、ごめんなさいを大切にすること。ありがとうの気持ちと、ごめんなさいの気持ちは、目には見えない。目に見えないものというのは、大切なものであることが多い。したがって、その目には見えないものを具現化するために、声に出すのだ。声に出せば、目には見えないけれど耳で聞くことが出来る。耳で聞くことが出来れば、それは心に入ることが出来る。

 

他人同士、特に大人同士になると、なかなか目に映らないものを見ることが出来なくなってくる。しかし、大切なものは私たちの周りにあるはずである。それを口に出し、具現化することで、初めて存在を確認できるようになるのだ。この本は、そんなことを教えてくれた。

 

(20代女性)


 

 

 

 

出だしはつまらない本だった。6歳の少年が大人に対いて抱く幻滅や大人に対する処世術を描写されても僕にはあまり響くものがない。だが、退屈な序章を過ぎると思いがけずに色鮮やかな世界が急に現れる。6歳の少年が抱いたであろう大人への幻滅、それを実に生き生きと愚かしくも愛らしさを感じさせるように描く。

 

僕は王子様の目線から眺めた大人たちの愚かしさがとてもリアルなことに驚いた。 お金を貯めるためにお金を貯める大人。飲んだくれる現実から目を背けるために今日も飲んだくれる大人。そんな大人たちに対する王子様の視線、王子様が余計な解釈はつけずにただ端的に大人の不可解さに首をかしげるさまに僕は感じ入るものがあった。

 

子供の純粋な視線からは理解しがたいであろう大人の在り方、それを僕たち大人は色々な解釈をつける。飲んだくれが酒を飲まずにはいられない理由を様々な角度から部外者がぶった切り、目的もなく金をためて財産を増やすだけの空虚さに人生の意味を絡めて批評する。

 

僕らは色々と批評しすぎる。理解できないなら理解できないで、ただそれだけでいいのに、理解できないのに理解した気になって上から目線で手前勝手な意見を振りかざしたりして留飲を下げる。 違うものを受け入れられないの自分の心はピュアなせいなのだ、などと自己を擁護する声を聞くこともある。だが、それはただの正当化に過ぎない。

 

違うものを受け入れられないだけであればわざわざ批判する必要もない。自分と違うものを受け入れないために種々雑多な理由をかき集めるのはピュアなのではなく、ただ防衛的な態度でしかないのだ。 ピュアな王子様を通し、ピュアでない自分を発見する。 誰しもが生まれた時はピュアな赤ん坊だった。

 

しかし大人になるにつて、覚えなくていいことを覚え、覚えていなければならないことを忘れる。自己欺瞞が分厚い皮膚となり、ピュアだった心なんて簡単には見つけられない。 でも星の王子様を読むと、大切なものを思い出せる気がする。

 

(30代男性)

 

 

 

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