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読書感想文「てるてる坊主の照子さん(なかにし礼)」

この本は母の照子と父の春男の間に生まれた4姉妹の成長が描かれた、高度経済成長期の大阪が舞台の作品である。私は平成生まれなので、昭和時代のことを直接知っているわけではないが、一家の住む大阪の街の情景や、年々豊かになっていく人々の生活、商店街の人々と家族の関わりにもきちんと触れられており、当時の大阪の人情味を感じながら暖かい気持ちで読み進めることができた。長女の春子はフィギュアスケートでオリンピックに出場、次女の夏子は歌手として成功を収めるのだが、どちらも子どもの夢であると同時に母の夢でもある。母はとても元気で何事に対しても大きな野望を抱えており、読んでいても「子どもたちは、なにか大きなことをやり遂げてほしい」という熱い想いが終始感じられた。実際どれだけ大きな大会に出場して優秀な成績をおさめても、母の大きな野望が満たされることはなく、もっと高みを目指すように子供たちにはっぱをかけている。時には母が子供たちの気持ちを考えずに夢を押し付けているだけで、子どもたちにとっては迷惑なのではないか、と思うところもあったが、父の春男が理性的で落ち着きのある性格で、しばしば照子の暴走を止めてくれていたおかげで、うまく家族の中でバランスが保たれていたようだ。春男はパン工場を経営しており、物語後半には『イースト菌』が一つのキーワードとして登場する。春子と夏子がスランプに陥り、照子が子供たちに干渉しすぎてしまった時、春男は照子に「子供たちが自分の夢をかなえて、自分らしく生きられるように、親はそっと見守ってやるべきだ。親は子供のイースト菌のようなものだ」と助言する。
[google-ads] イースト菌はパンを膨らませるために必要な菌であり、パン職人はこのイースト菌がパンを膨らませてくれることを信じて、パンを作っていく。そしてパンが出来上がる頃には、イースト菌はひっそりと姿を消す。親もこのイースト菌のように、子どもたちが自分の夢を信じられるように少し離れた所からそっと見守ってあげる存在にならなければならない、という意味である。現代でも子離れができず、子どもが成人した後も干渉しすぎてしまう親が多い。このイースト菌のたとえは、そういった親に対するアドバイスであるのは勿論だが、同時に子どもに対しても「親の言いなりではなく、自分の意志でやりたいことをやればいい、自分らしい人生を歩めば良い」というメッセージを含めているのではないかと感じた。自分のこれまでの人生を振り返ってみても、周りの人々の視線に縛られて自分の押し殺してしまうことが多かったのだが、これからはもうすこし自分の意思を大切にして生きも良いのではないか、と考えさせてくれて、自分らしさを追求する勇気を与えてくれる作品だった。
 
(20代男性)
 
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