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読書感想文「朱夏(宮尾登美子)」

宮尾登美子さんの作品は時代を背景に強く生きる女性を描いた長編が大好きだ。この「朱夏」は敗戦の混乱の中、想像を絶する苦難の荒波にもまれながら生き抜くヒロインの物語である。著者自身、満州に暮らした経験が随所に散りばめられていることを強く感じる。戦争を実際に体験した世代が減り行く今、このような小説は大変貴重である。忘れてはいけない、そして日本人として知っておくべき事実がある、と思う。
 
私も戦後生まれだが、満州について非常に興味があり、満州について書かれた本は実録でも小説でも多く読んできたし今後も読み続けたいと考えている。「朱夏」を読み進めていくうちにヒロイン綾子の心情が伝わってきて、心に染み渡る想いがした。何ゆえ戦争などという出来事があり、このような苦難を強いられたのか。あらためて戦争などあってはならないと痛感する。毎日生き延びることだけに向き合うことの大切さをも感じることができる。
 
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現代の暮らしとの、あまりにも大きな違い。物の溢れた自由な現代社会、しかし私たちは生きることに、ひたむきだろうか。運命に逆らうことなく真っ直ぐに受け止め淡々と戦っているだろうか。限られた環境で限られたものだけで生きて行くこと、そして、まずは命を守り抜くこと、そんな迫り来る毎日を自分らしく生きることが私なら出来るだろうか。現地の中国人との交流も鮮やかに書かれていて、そのような時代の中、それぞれの立場で国民性の違いもありながら交わっていく綾子の姿に逞しさを感じた。
 
満州に心惹かれる私。ありえない残酷な史実があったであろう満州、けれど幾多のその時代を生きた人々の懸命さと生きることを思う清らかな魂が、美しいヴェールをまとって私を手招きしているように思う。今後も満州について知りたいし、ぜひ一度現地を訪れてみたい。「朱夏」のような本にめぐりあい、ヒロインに寄り添いながら読破することは私を成長させ何者にも変えがたい貴重な時間である。
 
(60代女性)
 
 
 

 
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