読書感想文「僕はロボットごしの君に恋をする(山田悠介)」

主人公の健が、自分がAIロボットであることを知った時はどんなにショックだっただろう。話が進むに従って一喜一憂する姿からは全く予想できず、終盤に入り意表を突かれてしまった。

 

さらにヒロイン咲を見守り続けた一連の行為はAIロボットに施したプログラムによるものとわかり、ロボットの儚さと人の無情さを感じた。AIが話題になる昨今、将来身の周りで起こるかもしれないことだと思うと、人とロボットの境界線とは何か考えさせられる。最後に健は初期化を経て戦闘ロボットにされてしまうが、好感を持てる点がいくつかあった。

 

健のようにAIロボットはデータの蓄積やプログラミングの改修を重ねれば、規則を破り自分を犠牲にしても、守りたい、一緒にいたいと思うのだろうか。不人情や無感情な人も多い中、そのようなAIロボットがいたら、咲のように自然と好意を持ってしまうだろう。 また、咲の一貫した態度にも清々しさを感じた。以前の健は、遠隔操作したロボットを使って咲と会っていたことを、咲に告白できないエゴがあった。

 

 

 

ロボットに比べて健はチビで気弱で冴えないのである。健の行為や思考は、プログラムされたものだったとしても、冗談で済ませられるものではない。ところが、咲は健の正体に驚いても、健が単なるロボットに変わっても、初期化前の健のデータと勿忘草の押し花を手に取って健の帰還を願う。日常に追われて忘れかけそうな、大切な人への純粋な気持ちを思い出させた。

 

1つ不思議なのは、健をプログラムし破壊しようとした張本人の陽一郎が、健に対して気が咎める感情があったのではないかと思われることだ。研究所の職員でない咲が、健のデータのコピーを取るのは難しい。そのためエリート研究員である陽一郎が妹のコピーを容認するような、多少の気持ちがあったように感じられた。

 

この本のカバーには、咲と健以外に陽一郎と思しきイラストがあり、「何でも言えよ、幼なじみなんだから」という、健に向けていたようなセリフが添えられている。愛情をプログラミングすることでAIロボットの完成を目指していた陽一郎が、今後暴走しないAIロボットを完成させることができたら、健の生きた証になるだろう。

 

勿忘草の花言葉が、健のメッセージとなって余韻を残す。そのような小説である。

 

(40代女性)

 

 

 

 

僕はロボットごしの君に恋をする
山田悠介
河出書房新社 (2017-10-21)
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