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読書感想文「銀河鉄道の父(門井慶喜)」

賢治の父、宮沢政次郎は岩手県花巻で先代から営む質屋の主人である。学校の成績は優秀だったが、父親から学才は家業に必要ないといわれ、学問を追及することは頭になかった。境遇は違えど、私の父は経済的理由から大学進学をあきらめ、自動車販売業の営業職、サラリーマンを40年間勤め上げた。
 
古き時代の父といえば物分かりのよくない堅物の頑固なイメージだが、 そんな頑固おやじの印象を保ちたい反面、息子を溺愛する、いってみれば過保護すぎる父親像を表現している。賢治が幼少の頃から亡くなるまで、息子に右往左往させられ続け、理想の父親像を演じようとしながらも、最終的には甘やかしてしまうなんともコミカルというか今でいうイクメンというか、子煩悩な父親として描かれているのだ。
 
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私は3歳のとき、耳の病気で手術することになったのだが、手術台で恐怖のあまり、泣き叫び、「殺される。お父さん助けて。」と泣き叫んだそうである。そのとき私の父親は、どうしようもなく、やるせなく、涙ぐんだとのことである。かすかな記憶はあるが、このことを親戚が集まる場所など、ことあるごとに話すのである。これが親の遺伝子に組み込まれているのか、愛情というのだろうか。
 
この小説では、賢治が駄目人間で、不安定で、逆に自分がこだわったものにはとことん異常なまでに執着してしまうという、かなり変人で困った奴、というキャラクターで描かれる。これは医学的に言うと、一種の発達障害で、心療内科で適応障害だと診断された私の妹に姿を重ねてしまうのだ。感情移入せずにはいられなかった。
 
「あめゆじゅとてちてけんじゃ」。魂が揺さぶられた。破壊的インパクトをもって心に落ちてきた。「あめゆじゅとてちてけんじゃ」は岩手県花巻地方の方言で「雨雪を取って来てちょうだい」と言う意味。 病で死の床にいる賢治の妹が、熱で意識がもうろうとする中、渇いた口を潤そうとして、 兄の賢治に「みぞれ交じりの雪を取ってきて」と頼むシーン。
 
南国育ちの私が雪に対するイメージ、表現がいかに乏しく貧弱であるかを強烈に叩きこまれた描写である。東北地方の人々の雪に対する神聖な感覚、畏れ、厳しさ、生命を限りなく鮮明に、抽象的、現実的の枠を越えて、私の心に鋭角的にはいってきた。この感覚はしばらく忘れることはないだろう。
 
(40代男性)
 
 
 

 
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