読書感想文「月の満ち欠け(佐藤正午)」

全体のテーマとして人の生まれ変わり、前世の記憶について書かれていることに関心を持ち読み進めていった。私自身には前世の記憶は無いが、この小説を読む中でもしかすると輪廻転生と言う言葉は存在するのではないかと感じ始めたのである。
 
今ここで出会う人や物、場所は全て前世の自分に関連することで、だからこそ自分はそこに無意識の中で吸い寄せられているのでは無いかという気持ちにさせられる作品だったのだ。時々自分が初めて訪れるはずの場所や初めて出会うはずの人にどこかですでに体験したことがあるようなデジャブを感じることがある。
 
それはきっと前世の記憶にあるものなのだと思えたのである。そう思うことで自分の中で何かが腑に落ちて安心感を覚えたのだ。小説の中では長い年月をかけて何度も生まれ変わりを果たす女が出てくるが、仕草や生まれ持つ性質のようなものは姿は変わってもずっと同じく持ち続けている。
 
自分の中や家族の中にある価値観や物の見方、解釈の仕方、そして無意識に表れる仕草は輪廻転生を繰り返しても変わらずに持ち続けているのかもしれない。そのようにこの作品を読んで自分の中での考えが変わったのである。私は今まで心のどこかで死んでいくことを恐れていた。
 
それは死んで体が無くなってしまうことで自分と言う魂や記憶はそこに元々存在すらしなかったように一瞬で消えてしまうと思っていたからである。しかし前世の記憶、輪廻転生を通して人はまた過去生の繋がりを求めて愛すべき人たちやもの達に再開することが出来るのであればそれは素晴らしいことであり何も恐れることは無いのだと感じられたのだ。
 
人の生まれ代わりを月の満ち欠けと表現していることにもとても納得がいったのである。人の生まれ変わりは月の満ち欠けと同じように自然の摂理なのである。人間がこの宇宙に存在することも月の存在と同じで何も特別なことでは無くてとても自然なことなのである。
 
人も月も同じように宇宙の存在の一部であり、過去に起きたこともこれから起こることもすべて偶然では無くて必然なのだと前向きに感じることが出来た。
 
(30代女性)


 
 
 
面白くてハラハラドキドキした。最初のほうは意味が分からず誰が何をした人なのか、何が起きているのか全くつかめなかったけど次々に人妻の瑠璃さんが生まれ変わって会いに来ている、ということがわかると面白くもあり、切なくもあり、ちょっと怖くもなった。
 
もしかして自分が出会った人たちも意味のあるものなのではないかと乙女チックな気持ちになれる小説だった。あらすじはある程度想像できるが、その時々の登場人物の気持ちが細かく描かれていて切なくなる。私はちょうど子供を出産したばかりに読んでいたので子供の体内記憶や生まれてくる前の記憶など、話ができるようになったら真剣に聞いてやろうと思えた。
 
スカッとするような小説ではないが、こんな人ももしかしたらいるのだろうかと思えるほど本当にあったことのように感じられた。普段当たり前に感じているようなことも誰かにとったらとても貴重なもので、忘れてしまったようなことでも誰かにとったら素晴らしい体験だったこともあるのかもしれない。
 
これから誰に出会って、誰と別れていくのだろうか。今まで自分が築いてきた人間関係もどこかでつながっているのならこれからもつながって、誰かの生きる希望になるのだろう。生まれ変わっても会いに来たいと思われるような人になりたい。
 
だけど本当にそんなことまでされて目の前に出てこられたらちょっと怖いような気もするけど、実際どうなんだろう、と思う。好みや言動は育った環境も大いにあるのだろうけど前世の影響もあるのだろうか。あとはそこまで人を好きになれるのだろうか。
 
生まれ変わっても好きでいられるような人に会えているのか、執着して会いたくてたまらない人がいるようなアツい人になれるのだろうか。自分のこととして考えるのには苦しかったけど、こんな人が世の中には少なからずいるのだろうなと感じた。他の小説も見たみたいと思ったし、この小説に出てくる言葉や短歌など勉強になった。
 
(30代女性)
 
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