最初は「これは、『君たちはどう生きるか』みたいな小説なのかな」と思いました。物語の冒頭は主人公の少年の失敗から始まります。その失敗というのは子供によくありがちな事、そして我々も時としてやってしまう、いわば風邪のようなものです。そこだけ読めば「こういうことはしてはいけないな」と思う一方で「やはり国がこんなことをしてはいけないな」などと思うようなものです。
ただ、『君たちはどう生きるか』のように、一つのテーマ、一つの失敗で終わってしまうような話ではありません。その後もこの本の中では、主人公の少年の様々な葛藤とそしてそれによる失敗が描かれていきます。なぜこの少年は失敗をするのでしょうか。我々はこの本を読み進めていく中で、その答えをうっすらと解きほぐしていくことができます。
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お母さんがいないことなのではないか、しかし、主人公のお母さんはその後登場し、主人公のお母さんとなります。それではそのお母さんが良くない人なのではないか。しかしそれでも、物語後半で主人公は「お母さん!」と叫びその存在を認めています。
私はこの本を読んでいく上で、自分は両親から見てどういう存在だっただろう、そして子供から見て自分はどういう存在に見えるんだろうということを感じました。そしてもし、自分がいなくなったとしたら?と思いました。我が子はこの主人公の少年のように、さまざまな失敗をしてしまうのでしょうか。
それとも自分がそういう少年だったからこそ、ここで描かれている少年のことが「わかる、よくわかる」と思ってしまうのでしょうか。この本の中では、真面目なお父さん、そしてその真面目さを引き継いだ娘も登場します。しかしその娘の出生には大きな秘密があり、それによって娘の縁談は危機を迎えてしまいます。
その縁談を望まない主人公の少年と、後半で登場するお母さんは、我が子でありながらその存在を厭われるという関係にあります。そんな複雑な世界の中で、彼ら一人一人がそれぞれに生きる価値を見出していくのです。それとともに、読んでいる私も家族の中における自分自身の存在と言うことに気付くことができます。
決して明るい本ではありませんが、生きていくことの尊さを教えてくれる本です。ご家族を持つ方にはおすすめしたい一冊です。
(30代男性)
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