読書感想文「黒面の狐(三津田信三)」

戦後間もない福岡の炭鉱を舞台とした、ホラーとミステリーの混ざりあった作品でとても楽しめた。導入部分がしっかりとなされており、炭鉱での専門用語なども理解しやすかった。炭鉱という特殊空間の世界に、主人公の波矢多と一緒にすんなり入り込んでいけた。

 

会社は炭鉱夫たちを使い捨てぐらいにしか思っておらず、落盤事故などで帰ってこれない者も少なくない。という事を理解して潜る炭鉱。その閉鎖感や雰囲気の描写と表現は素晴らしく、地下でのシーンは息苦しさまで感じるような物になっている。波矢多を炭鉱に連れてきた兄貴分のような合里や、炭鉱夫の師匠的存在の大屋取、嫌なヤツの木戸や喜多田などキャラクター達も魅力的で物語を賑やかにしている。

 

 

 

そうやって読んでいる方も波矢多も炭鉱というものに慣れた頃に、崩落事故が発生し合里が一人閉じ込められる事となる。そしてまるでそれが契機であったように、炭鉱夫たちが次々と死んでいく。それも密室の中で、皆注連縄で首を括るという異様な方法である。

 

さらに殺害現場の近くで、黒い狐の面を付けた怪人物が目撃されたりするなど、一気に物語もそれまでの歴史小説のような雰囲気から、明確なホラー・ミステリーへと様相を変える。ここからは前半の炭鉱内の閉鎖した恐怖とは違い、正体の見えないもの・得体のしれない黒い狐が、炭鉱の内外をうろついて皆を殺害しているのではないか?

 

という薄気味悪いジンワリとした恐怖感が漂ってきて、非常に物語に深く引き込まれていく。犯人は一体誰なのか、若しくは人ならざる者が本当にいるのか?など読んでいて疑問が尽きず、終盤に向けてどんどん盛り上がっていった。その後波矢多が探偵役となり、事件の謎を解いて真相が明示されるのだがそれに至る謎解きも二転三転し、仮説を披露しては否定していくというアクロバティックなもので、読んでいて一体何が真実なのがドキドキさせられた。

 

無論最終的にはしっかりとした解決が成される。明かされた犯人及びトリックは予想できなかった物なのでかなり驚かされた。ホラーの恐怖感と、ミステリーの驚きが両方楽しめたし、シリーズ化を匂わすような終わり方だったので、続きがあればまた読みたい。

 

(30代男性)

 

 

 


 

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