読書感想文「夫のちんぽが入らない(こだま)」

「夫のちんぽが入らない」という書名、間違っても書店員に問い合わせはできまい。しかし強烈に頭に残るそのフレーズに、私は惹きつけられずにはいられなかった。人には様々な生き方があるということは、誰もが知っていることである。だが、それを本当の意味で理解することはたやすいことではない。他人にとっての「普通」を押し付けられ、苦しい思いをするということは、私にも経験がある。

 

他人の「普通は〜だよ」という一言にはらわたが煮え繰り返るような日もある。「普通」はそうだからなんなのだ。だいたい「普通」とは誰が決めたのか。そんな適当な他人の主観で自分の人生を汚されてたまるか、と。今の時代は特に「普通」という枠に当てはめて話すこと自体が滑稽である。働き方はさまざまであるし、女性の社会進出は増加し、セクシャルマイノリティーへの理解や、個人の生き方は多種多様になった。

 

著者であるこだま氏は、夫とどうしても「できない」ことに対して悩み、あがいている。いちばん近い存在とも言える家族になった夫との夫婦の営みが成立しないということは、肉体的、精神的に著者を追い詰める。他人の何気ない一言にさえも、憤りややるせなさを感じている。この本の結末は、問題が解決するというものではないので、スッキリする終わり方とは言えないかもしれない。しかし私にとっては納得する終わり方だった。

 

そういうものが人生だろう。わかりやすく問題が解決するのは、ドラマや映画の中のみだ。実際は人間関係や仕事、家族の悩みはなかなか解決しない。学校の勉強のように正解がないからだ。それでも私たちは手探りでもがくように生きていくしかないのだ。悩み、迷い、傷つき、傷つけられて、それでも生活していく。

 

そして、そんな私たちだからこそ、お互いに思いやり、理解しあい、寄り添っていくことが大切なのではないだろうか。誰しもが、人には見せない部分があり、その人の今までの決断すべての結果として、そこに存在しているのである。軽々しく他人の生き方に異を唱えることは、想像力の欠如である。そんなことが平気でできる自分ではありたくないものである。

 

(20代女性)

 

 

 

 

この「夫のちんぽが入らない」は主婦こだまの人生を描いだ私小説である。タイトルの通り、旦那になった男性の男性器が挿入できず、そのことによって苦悩する姿を描いている本だ。学生時代に運命的な出会いをした男性との性行為が不可能であるのに、どうでもいい男性との性行為が出来ること、また周りの女性のように子供を育てて暮らす人生から外れてしまっていることをに悩み、精神的に参ってしまった結果、

 

出会い系サイトを用いて、多くの男性と性行為を行ったりと一般的な倫理からは外れた行為を繰り返してしまったり、職場で上手く仕事ができず鬱病のようになってしまう。更には夫も鬱病のようになってしまったり、性行為が出来ない為か風俗に通っていることが判明。どんどん負の連鎖に巻き込まれていくが、それでも強く生き、最後には精神を取り戻して現状に納得する姿に好感を抱いた。

 

倫理や社会からの圧力に苦しむ人々に読んで欲しいと思った本である。社会的に見れば幸せではないかも知れないが、それでも最後には自身の幸せを掴む姿、その姿にはビョーク主演のダンサー・イン・ザ・ダークを思い浮かべてしまった。彼女のことを倫理で裁く人間が多くいると思うが、一生懸命に生きる人間のどのような感情・行為にも罪はないのである。そのことを自身の出来事を通じて、表現している秀作であるとわたしは感じました。

 

また作者のこだまはA4しんちゃんというユニットを組んでいて、そのユニットはコメディ寄りの文章を書く集団なのだが、冷たい印象の文章・重たい内容の小説にも関わらずいつでもユーモラスで思わず笑ってしまうシーンが沢山ある。それはタイトルにも現れていて、旦那の性器が挿入出来ないことは、非常に重たい出来事にも関わらず「夫のちんぽが入らない」というタイトルで済ませてしまうところがこだまらしさとも言えるだろう。

 

それもまた優しさであり、どのようなことでも笑いにしてしまう器の深さを感じる。

 

(20代男性)

 

 

 

 

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