読書感想文「ST プロフェッション 警視庁科学特捜班 ST 警視庁科学特捜班(今野敏)」

この本『ST プロフェッション 警視庁科学特捜班』は、ミステリー作家として有名な今野敏の最新作である。STシリーズは、2014年7月からのクールで、テレビドラマでも放送された今野敏の代表作にして、人気作である。シリーズを合わせて、208万部突破を達成した。

 

STシリーズは、本書『プロフェッション』で13作目になる。本書の関口苑生氏(文芸評論家)の解説にもあるように、このシリーズは今野敏にしては珍しく、最初からはっきりとシリーズ化を狙って書かれたものだという。作者自身がシリーズ化を狙っていただけあって、このシリーズは一度読むと病みつきになってしまい、次々にシリーズ本に手を伸ばしたくなってしまう不思議な魔力がある。

 

 

 

私も、ドラマの面白さに魅了され、軽い気持ちで一冊文庫を読んでみたところ、今度は今野敏の「STワールド」とでも言うべき、独特の空気感、世界観の虜になってしまったのである。本書もやはり今野敏の世界観が満載で買ってから2日間家に引きこもってあっという間に読み切ってしまった。久々のSTシリーズに終始わくわくしっぱなしであった。

 

それでは、具体的に本書『プロフェッション』のどんなところがよかったのかを書いていく。まず、何といっても今回の主役は青山翔であろう。3件の誘拐事件が発生したのだが、その被害者たちはすぐに解放された。事件はこれで解決したかに見えたのだが、被害者たちは口々に「呪いにかけられた」と口にした。

 

青山といえば、プロファイリングの専門家であり、「呪い」などという不確かなものを信じるような人物には思えない。だが青山はこの呪いが、被害者意識や恐怖感といったストレスが、体に異変を起こすという「プラシーボ効果」に当てはまるのではないかと主張する。

 

この主張をはじめとして、本書『プロフェッション』では青山の心理学から考えた発見が非常にものを言う。美少年であるだけでも青山の存在価値は大きいというのに、今回は客観的に見ても青山の活躍ぶりが光っているので、私含め青山ファンの読者には最高の一冊となるであろう。

 

そして、本書でもう一つ心に残る点となれば、それは「ST勢を囲む他の人たちの変化」をあげることだできるだろう。上では青山の魅力ばかりを語ってしまったが、本来このSTシリーズの魅力は、STのメンバーたちの強烈すぎる個性にあるといっても過言ではないだろう。人嫌いと言いながら人を魅了し、引率する力のある赤城。美少年でプロファイルをやらせれば右に出るものはいない青山。

 

物理担当で、並外れて聴覚が発達している結城。無口だが優れた嗅覚を持ち、武道の達人でもある黒崎。ST唯一の常識人であり、僧侶でありながら化学の専門家でもある山吹。これら個性豊かな5人をまとめることを任されたのが、若くして警部である百合根だ。シリーズ当初は、百合根自身も彼らSTのメンバーのことをつかめずにいた。しかし、様々な事件をともに乗り越える中で、百合根はSTメンバーの良さや可愛げに気付いていくのである。

 

そして、本書ではとうとうSTの良さに、百合根以外の人々が気付き始めたのである。特に、本書で大きな変化をしたのは、STと捜査一課の連絡役である菊川だろう。シリーズの始めのころは、STの常識破りな行動に非難轟轟だった菊川だが、嫌々ながらもSTとともに行動するうちに彼らの実力を目にし、だんだん彼らの対する見方が変化してきたのであろう。本書では、青山と一緒に活動することが多く、二人の掛け合いはごく自然なものであった。

 

STファンとして、こうしてSTのメンバーが周囲に認められていく様子には、非常に感慨深いものがある。だが、それと同時に今までのSTよりも少し遠い場所に行ってしまったように感じ、寂しくもあるのだ。ファンの感情とは、なんとも複雑なものである。

 

いずれにせよ、本書『ST プロフェッション 警視庁科学特捜班』が最高のものであることに変わりはない。そして、どんなに彼らが遠くに行ってしまったと思っても、再びページを開けば、彼らはやはり楽しそうに笑っているのである。彼らの笑顔は、私たち読者の日々の小さな事件を解決してくれる最高の魔法なのだ。

 

(20代女性)

 

 

 

 

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