読書感想文「薄情(絲山秋子)」
舞台は群馬でドライブシーンが出てくるといえば、まず思い浮かぶのは絲山作品である。作家のホームともいえる群馬を舞台に、地方と都市との関係、人と人の距離感をうまく描きだしている。文体は三人称でありながら、宇田川の心の中の描写...
舞台は群馬でドライブシーンが出てくるといえば、まず思い浮かぶのは絲山作品である。作家のホームともいえる群馬を舞台に、地方と都市との関係、人と人の距離感をうまく描きだしている。文体は三人称でありながら、宇田川の心の中の描写...
この本は、吉村達也著作のミステリー小説の代表作である朝比奈耕作の番外編のようなものである。主人公朝比奈耕作はミステリー作家なのだが、彼のもとに中学時代の同級生の女子から不可思議な手紙が送られてくる。その内容は整然とした中...
ヤングアダルトに分類される小説であるものの、文章に説得力があり、最後まで読み切った。2人の友人に勧めたところ、2人とも気に入ってくれた。悲劇的な展開を好まない友人でさえも、主人公ウィローの両親が死んでしまう話を素晴らしく...
「宮本武蔵」の読書感想文 吉川英治著作の宮本武蔵という小説を読んだ。昭和の文豪、吉川英治の作品は没後50年が経過していることから、今ではすべて青空文庫で読むことができる。キンドルを使用しているならば、Amazonのキンド...
小説の中でも、森博嗣の作品が最も好きだ。というのも、その情景のテイストと文章構成のマッチングが最高に感じるからだ。中でもこの『銀河不動産の超越』は突出していて好きだ。基本的にミステリが多いのに、文芸的であり私小説であり物...
「鬼平犯科帳」の読書感想文 最近読み返して、「やっぱり面白い」と唸ったのが、かの名作「鬼平犯科帳」だ。江戸時代の「火付盗賊改方」、つまり犯罪を取り締まる機関のトップである、長谷川平蔵が主人公。彼は若い頃は義母に苛められ、...
七十代半ばの、傍から見ると認知症が始まっていると思われてしまいそうな「桃子さん」の話だ。頭の中の様々な声と共に一人暮らしを送っているのだが、その声の持ち主は子供の頃から少し前までの桃子さん自身や、亡くなった夫である。声は...
「乳房」の読書感想文 池波正太郎先生の「鬼平犯科帳」が好きで、この本は鬼平世界と繋がっていると聞き手に取った。だが本作の主人公は、鬼の平蔵ではない。彼は狂言廻しのような、ささやかな役回り。主人公は、お松という十九歳の女性...
これは、榎本さわこをキーにしたどこにでも存在しそうな6名の女性の心情が綴られており、読み終えると「何とかならないのだろうか?」と案じられてしまう小説である。 フードコーディネーターを目指しキャリアを積んできた美香子の心の...
ストーリーとしては自分の学校で集団自殺があり、息子もその一人。警察は自殺と片付けたがその原因を父が解明しようと動くものである。作品はあくまでフィクションだが読んでいて最近の子供教育・子供達の行動を見ているといつか自分の周...
この小説「砂上」はテレビで直木賞作家の本谷有希子さんが「最近一番熱中して読んだ本」とコメントしていたので気になっていて、それがきっかけで読んでみた本であった。この本は「ホテルローヤル」で直木賞を受賞した桜木紫乃さんの著書...
私はこの本を読み、2つの点に気づいた。一つ目に先入観を持たないことの大切さである。この本を読む前の私は瑕疵物件に対し怖い、危ない、幽霊が出る印象を持っていて、マイナスなイメージしか無かった。私はこの本も単なるホラー小説だ...
「海の見える理髪店」の読書感想文 この物語りは、過去と対峙する物語りである。誰だって、消してしまいたい過去を持っているものだ。そして、同じぐらい取り戻したい過去もあるという、この相反する二つの過去が、この作品では交差して...
「政と源」の読書感想文 下町に住む73歳の幼馴染のおじいさん達の日常を描いた作品だ。ちょっとしたトラブルや喧嘩などもあるが基本は日常、普通の暮らしぶりを書いている。なのに、なぜか生きる事について考えさせられたりホロリと泣...
福岡県福岡市を舞台とした、最近のミステリのジャンルの一つになりつつある「人の死なないミステリ」作品である。女子高生の主人公(ワトソン的配役)と癖のある大学生(ホームズ的役割)の出会い。交流していく過程で起こる些細だが誰も...
「ツナグ」の読書感想文 私はほとんどミステリータッチの小説は読まない。怖がりであるからという単純な理由である。であるからツナグに関していえば、読む前にかなり迷った。この世で生きている者と死者を、一生に一度だけ再会させてく...
「月の砂漠をさばさばと」の読書感想文① この小説は、小学3年生のさきちゃんとそのお母さんの日常生活を描いたお話である。何ひとつ衝撃的な事件が起きたりはしないし、作者が泣かせよう泣かせようと一生懸命になっている気配も感じな...
「我が家のヒミツ」の読書感想文 6つの短編小説を読み終え、切なく優しく、ほわっとした温かいもので心が包まれたような幸せな気持ちになった。一つ目の「虫歯とピアニスト」では、主人公・敦美と憧れの人との偶然の出会い、その距離感...
主人公であるトップアイドルグループMORESの亜希子の抱える悩みが葛藤している様子が、アイドルもサラリーマンも同じ人間なのだと思えて親近感が涌く。なぜ自分はここにいるのか、なぜ自分なのか、周りは過大評価しすぎている、と自...
「さらさら流る」の読書感想文 美しい装丁のハードカバーである、「リベンジポルノ」を題材とした考えさせられるテーマ。柚木麻子さんならではの人間の感情のドロドロさや潔さなどの感情描写がとてもよかった。タイトルの「さらさら流る...