最後の相場師と呼ばれた是川銀蔵氏の自伝。是川氏に関する書籍は、他者により書かれたものも複数存在するが、こちらは唯一の本人による描き下ろし。是川氏は明治時代の兵庫に生まれ、極貧の育ちから商いの成功を夢みて努力し這い上がり、一度はどん底に落ちるが株式投資にて再起を図り、昭和の終わりには高額納税者番付で全国一位となる。
これだけでも充分すごい人物だということが分かるが、実際に彼の言葉で語られる出来事は、壮絶な生き様を知ることができる、というよりも知らされる、という物言いがふさわしいかもしれない。とにかく、スケールが大きい男である。社長時代には実印を10個作って部下に持たせたり、シベリア経由でロンドンを目指す途中戦争に巻き込まれて日本軍の御用聞きとなったり、税関長にピストルを突き付けて交渉を迫ってみたり、壮絶だ。
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しかし、破天荒なだけで終わらない懐の深さや思慮深さ、昔の日本人の忍耐強さみたいなものを感じた。最初は、私も株式投資をするはしくれとしてこの本を手にしたのだが、こちらはノウハウや指南書ではなく、大局観の掴み方や極意のような見方が出来たように思う。また、ドラマチックな展開にハラハラドキドキしながら、読み物としても面白く一気に読み終えた。
是川氏没後二十年以上経っており、その間に個人投資家はネット証券に流れ、高速売買システムが採用され、AI技術を取り入れた投資など、市況を取り巻く環境は大きく変容し、個人投資家が株式市場をけん引するなど到底無理な時代となったが、是川氏の教えは現代にも通じる言葉がたくさんあると思う。
また、何より心にひびいたことは、これだけの大金を動かした人物でありながら、お金を儲けるにはたゆまぬ努力が必要と説き続けたことである。
まだインターネットもない時代、日経新聞を隅から隅まで読み、証券マンから毎朝送られてくる市況を独自で分析し、住友金属鉱山の金脈発見にいたっては、戦中の朝鮮半島で鉱山経営をしていたときに地質の猛勉強をしていた経験から一世一代のチャンスと、すぐさま飛んで現場責任者に話を聞いたりと、株式投資で成功することは容易ではなく、努力し続けることが大事だとシンプルでありながらとても強いメッセージは心に刺さる。
(30代女性)
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