読書感想文「ナディア・ブーランジェとの対話(ブルノー・モンサンジャン)」

この本は、伝説的なクラシックの音楽教師であったナディア・ブーランジェの対話を中心とした、彼女の発言集である。クラシック音楽の世界を本気で志した人であれば、ナディア・ブーランジェの名前を知らない人はいないだろう。バーンスタインをはじめ、アメリカ合衆国の名だたる音楽家のほとんどが彼女の指導を受けている。

 

もちろん、フランスで指導しているので、その他の国の弟子も多い。しかし、かなりのクラシック・ファンであっても、自分で実際に演奏を試みた事がない方は、ブーランジェの名前は知らないかも知れない。彼女は音楽教師で、作曲家でも演奏家でも指揮者でもないので、テレビやコンサートやCDでどんなにクラシックを見ても名前が出てこないからだ。

 

 

そういう意味で、伝説的に有名ながら、大変に謎めいた存在であった、ナディア・ブーランジェの実像を知ることが出来たのは、大変に貴重な体験だった。また、誰かから見たブーランジェ像ではなく、本人の声という所が、また価値が高いと思った。

 

なにより驚いたのは、世界の一流のクラシックの世界は、これほどまでに常人とはかけ離れた超能力のような才能の持ち主たちなのか、という事だった。ブーランジェ自身は音楽教師であって作曲家としても演奏者としてもあまり人前に立っていないが、それでもほとんどの曲は1回聴くだけで、その音のすべてを楽譜に書けてしまうのだそうだ。

 

そして、実際に良いと思った曲は、何年たっても1音も逃さずに忘れないそうだ。ピアノがいくつかの音を同時に演奏したとして、その音をすべて聴き取り、その音程を指摘するだけでも容易でないというのに、ひとつの曲を聴いて、どの楽器がどういう音を演奏したかというのを全部聴き取ってしまうという事が本当に出来るのかと、本当に驚いた。

 

そして、彼女だけがこうした超能力のような才能を持っているわけではなく、多くのクラシックの一流音楽家は、なにかしらこうした才能があるという事が、当たり前のように彼女の口から語られていて。驚いた。特殊な世界の実像を、虚偽なく当事者の証言として知ることが出来る、貴重な本だと思った。

 

(40代男性)

 

 

 

ブログをメールで購読

メールアドレスを記入して購読すれば、更新をメールで受信できます。

 

 

 

 

コメントを残す

シェアする