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読書感想文「一茶の相続争い(高橋敏)」

「一茶の相続争い」を読んで驚いた。俳人小林一茶が相続争いを起こしていたのだった。俳人と言え普通の人間であり、財産が欲しいと思う欲が出るのも人の世の情けかなと思う。小林一茶は北国街道柏原宿の百姓の小せがれだった。名前を弥太郎という。
 
その弥太郎が異母弟と10年にも及ぶ相続争いをしたのであった。この本を読んで一茶のイメージがかなり変わったが、一人の人間が生きてゆく執念が俳人一茶がもちあわせていたことに安心した。一茶もわれわれ凡人と同じような欲望を持ち合わせていたと知ってホッとした。
 
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童謡に「一茶のおじさん」がある。昭和12年に作詞作曲された童謡だ。信州信濃の山奥で雀と遊ぶ一茶のイメージが浮んでくる。歌詞の中に「我と来て遊べや親のない雀」の一節もある。この詩にほのぼのとした一茶の世界を想像していたが、この本を読み進むにつれて実はそうではなかったということが身に染みて分かった。
 
一茶は柏原村の貧農に生まれた。小さいときから継母にいじめられ苦労する。しかしその環境にめげずに、やさしい愛情を子供や雀、蠅に見せた。しかし弟弥兵衛との間で親の財産の相続争いで長期間もめ続ける意外ともいえる一面があった。
 
一茶にも身勝手なところがあった。15歳で江戸に出て、36年の間柏原村を離れていた。江戸を中心として諸国を徘徊する俳諧師として生活していた。それが突然50歳になって故郷が懐かしくなったのか帰郷した。弟にとっては急に帰ってきて兄貴面を吹かす一茶の存在は誠に煙たかったろうと思う。
 
その上親の財産を半分よこせとの相続争いを巻き起こしたからたまらなかったと思う。俳人として名を挙げた一茶であったが、家庭は不幸続きであった。妻や子供が次から次へと死亡した。自身も中風を発病した。再婚も破断し、三度目の妻を迎えた。妻やをが妊娠したが、半病人の一茶は大火に見舞われ憔悴しきって焼け残った土蔵の中で生涯を閉じた。
 
享年65歳だった。一茶が他界した5か月後にやをは娘を出産した。芭蕉、蕪村に負けぬ人気の一茶であるが、人生の後半に大変厳しい試練に直面していた。
 
(60代男性)
 
 
 
 

一茶の相続争い――北国街道柏原宿訴訟始末 (岩波新書)
高橋 敏
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