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読書感想文「君主論(ニッコロ・マキアヴェリ)」

15世紀のフィレンツェの外交官であるマキャベリは「支配」についてとても分かりやすく教えてくれます。この著書はニクソン元大統領など政治的リーダーは勿論のことアメリカの人気ラッパー50セントにも大きな影響を与えマキャベリに関する歌を作ったほどです。
 
「支配」というと独裁者や映画の悪役などネガティブなイメージが強いですがこの本を読んだら自分は知らない間に支配をしたり支配されていたりすることに気が付きます。そしてそのうえで自分がどのように振舞えばいいのかのヒントになります。
 
マキャベリは古代ローマからルネサンスまでの歴史の事例を扱い支配者がどのようにすれば円滑な支配を出来るかをまとめマニュアル化したのが君主論です。単なる自己啓発の本じゃないかと思うかもしれませんが、現代我々が書店で見かける自己啓発の本はこれから成功を掴もうとしている人に向けた本です。
 
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しかしマキャベリの君主論は常に力を持っている人に向けて書かれた本という点が興味深かったです。特に王の長男などがターゲットであったことが言えます。ルネサンスの激動の時代では世襲で安定した政治が実現できる保証がありませんでした。マキャベリは豊かな教養があるものの平民出身の身分であるからこそ客観的な立場で鋭い指摘が出来たのだと思います。
 
特に支配の種類について述べられている点では世襲による支配者、貴族に任命された支配者、国民に任命された支配者、武力など不当な方法で地位を手に入れた支配者など「支配者」という一つのキーワードの多面性を指摘しています。現代では世襲や武力による支配者を弾圧する本の方が売れるでしょう。
 
石原慎太郎さんの著書である「天才」が売れたのも田中角栄という0から努力した人間が国民の支持を得て日本のトップの座をつかみ取ったからこそ面白いのです。つまり現代社会では平民や貧乏な人が努力して成功するサクセスストーリーが好まれるしロールモデルとして都合がいいのです。
 
しかしマキャベリはあくまで客観的な立場から上手くいった支配について述べておりこの本を読むときは善悪という概念を一度忘れる必要があります。あくまで結果論なのです。そして歴史とは勝者が作るものであると思い知らされます。よくよく考えてみると全ての政策は善意で行われていますが誰が勝ったかで見方が変わります。
 
ヒトラー、ポルポト、スターリンなど一般的に悪と言われる独裁者ですが彼らの政策とはあくまで自国民の利益を追求した善意によって行われた行為なのです。逆にトルーマンの原爆投下の判断は戦争を早く終わらせたということで彼を英雄にしました。このように考えると歴史を善悪で語ること自体おかしなことだということが分かります。
 
15世紀の時点でこの事実に気が付いていたマキャベリの鋭さに脱帽させられる作品です。
 
(20代男性)
 
 
 
 

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