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読書感想文「レイモンド・カーヴァー – 作家としての人生(キャロル・スクレナカ)」

長きに渡るアルコール依存、家族との軋轢の中でも書く事をやめない。その生きざまに胸を打たれた。本書はアメリカの作家レイモンド・カーヴァーの評伝である。私はカーヴァーの小説を読んできたので本書を手にした。読んでみて、その小説と同じくらい彼を愛おしく思うようになった。
 
生まれついてのワーキングプアから中々脱する事のできない状態が続くが、その自身の体験が小説の基盤となっていた、という事がわかった。小説の登場人物は中流から下流に位置する人たち。アルコール依存の作家は古今東西存在するが、彼らのいずれも酒さえ呑まなければもっと書けたのにね…とは思わせない。
 
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カーヴァーもしかり。依存症時代の狂乱と痴態の中でも文学に対する姿勢は常に落ち着いている事に驚かされる。文学に向き合っている時間だけが唯一冷静でいられる時間だったのだな、と感じた。狂乱と冷静のはざまに生み出される彼の小説は圧倒的な魅力を放つ。カーヴァーの、何かに依存しないと生きていけないという弱さ、あやうさに私は魅かれているのだと思う。
 
飲酒へかける逸脱した熱量と文学への情熱は同じであった。私はそれを理解したいと思った。本書では家庭に徐々にほころびが生じていく様子が描かれるが、家庭を持つ身である私には身につまされるエピソードが満載である。経済の問題、不貞、子供のこと…作家も私たちも抱える問題は一緒だ。
 
家庭がだんだんだめになっていくそのさまに、自身を重ねる人も多かろうと思う。カーヴァーにあまり興味がないとしても、中高年の方のこころには訴えるものがあるのではないか。アルコール依存からの脱却と共に新たなパートナーを得たカーヴァーだったが、彼を待っていたのはガンだった。病の来訪は残酷であったが、彼がほんの束の間再生と平穏を手に入れたと知って私は嬉しかった。
 
本書を読んで、作家と自分の距離感の近さを感じた。カーヴァーはすぐそばに居る。好きな作家をそう思えるのは至福の喜びである。ここにいるのはむきだしのカーヴァーだ。ダメな部分は確かにあったが、不思議な事に怠惰は感じず、ただひたむきな生のみがみえる。そんなカーヴァーに、ひととき寄り添ってみてほしいと思う。
 
(40代女性)
 
 
 
 

レイモンド・カーヴァー - 作家としての人生
キャロル・スクレナカ
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