読書感想文「どくとるマンボウ青春記(北杜夫)」

北杜夫の『どくとるマンボウ青春期』が面白い。本書は同氏の人気エッセイ『どくとるマンボウ』シリーズの中の一冊で、特に気に入っている。著者の北杜夫は東京都内の麻生中学を卒業した後は旧制松本高等学校で寮生活を送ったが、本書では当時の生活が日記調で綴られている。

 

私が目を瞠ったのは旧制松本高等学校の生活の並外れた充実ぶりである。寮生はしばしば、誰かの部屋に集まって様々なテーマについて論議を交わす。トーマス・マンをつづったものが本書である。食べ物を倹約しなければならない時に密かに貯めておいたお金で牛肉を買って一人すき焼きをしたり、おもちに舌鼓を打った話が印象に残っている。

 

当時としてはかなり贅沢な話なのだが、食べ盛りの年頃にとってはこういう事でもないと勉強に励む事は出来なかったろう。人はパンだけで生きられるわけではないが、パンも重要なのである。寮生との語らいと食生活でプチ贅沢がある事によって、精神的な充実を得られるのだ。著者は東北大学に入れるくらいだから頭脳明晰であったと思われるが、それだけではない。

 

 

 

苦手な科目の試験の時どうしても答えが思いつかなかったため、苦肉の策として俳句を書いて提出したら、思いがけず担当の教師が点数をつけてくれた。答えの代わりに俳句を提出する所が斎藤茂吉の次男らしいと思ったが、点数をつけてくれた教師がユーモアがなければ彼を怒っていた事だろう。

 

彼が書いた作品は読むとくすりと笑えるので、呆れながらも面白味を感じたのかもしれない。もしも本書に書いてあるのが勉強だけだったら、この作品が生まれなかっただろう。勉強に励むのは学生の本文だが、しすぎても良くない。休憩をしたり、時には気分転換する事も必要である。

 

寮生は様々な家庭環境で育ってきたが、不思議と喧嘩をする事がない。本書を読むと彼らが勉学に励んだり大勢で集まって哲学などのテーマで論議に興じたりする様子が思い浮かんできて、羨ましくなる。旺盛な食欲と情熱を持って生活する彼らはたくましく青春期を生き抜いている。若い時代にしか出来ない体験と言えるかもしれないが、それだけに貴重である。

 

(40代女性)

 

 

 

 

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