読書感想文「こんなにも優しい、世界の終わりかた(市川拓司)」

「ぼくらは誰かを殴るための拳を持って生まれてはこなかった。この手は、大事なひとの背中をさすったり、美味しいものを食べたり、美しいものをつくったりするためにある。」この主人公の言葉が心に刺さった。私は小さい頃、周りから「優しい子」とよく言われていた。そう言われるのが嬉しかったし、誇らしかった。

 

でもいつのまにか、そんな誰にでも優しくできた幼い頃の私はいなくなっていたのだ。「自分がされて嫌なことは他人にもしてはいけない」「嫌なことをされてもやり返すのは間違っている」少なくとも私は、子供の頃に道徳でそう習った。それを私はずっと守って生きていた。ところがある日気付いてしまったのだ。

 

教えてくれた大人たち自身が、その約束を守れていないのだ。気づいた時はショックだった。満員電車でぶつかられたのは私なのに、ぶつかってきた本人が舌打ちをするのだ。そんな態度は習っていない。子供ならまだしも、大人なのに道徳の約束が守れていない。本当にショックだった。

 

 

 

でも、いつのまにか、優しくないことに慣れてしまって、優しかった私は幼少時代のものになってしまった。この本を読むまで、忘れていた。明日、世界が終わるかもしれない。そうなってからでは遅いのだと気付かされた。当たり前のように、明日があると思って生きていた。今度会う時でいいや、今度伝えればいいや。

 

そうやって先延ばしにした優しさや愛情は、必ず後悔につながると気付いた。世界が終わると分かってからでは手遅れなのだ。そうなってから世界が優しく愛情に包まれたとしても、もう終わりなのだ。当たり前のことなのに、私はすごく悲しくなったと同時に、大切な人に一瞬でも長く、愛を伝えていたいと思った。

 

いつ世界が終わってもいいように、大切な人に優しさと愛を、私の持っているありったけの愛を与えたい、そう感じた。もっともっと強く抱きしめて、少しでも多く愛を伝えて、温かい優しさを分かち合いたい、そう思った。私はこれから、明日世界が終わっても後悔しないように、愛する人に本気で愛を渡して生きていこうと強く思うことができた。

 

(20代女性)

 

 

 

 

こんなにも優しい、世界の終わりかた (小学館文庫)
市川 拓司
小学館 (2016-05-07)
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