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読書感想文「源氏物語の色辞典(吉岡幸雄)」

「源氏物語の色辞典」は源氏物語の登場人物が身に着けていた衣の色を忠実に再現した写真と物語の各章の概要、解釈が書かれている本である。この本が気になったのは源氏物語に出てくる色について知りたかったからだ。
 
本の著者は吉岡幸雄さん。吉岡さんは京都の「染司よしおか」五代目当主で美術工芸図書専門の出版社「紫紅社」の代表取締役を兼任しているので、日本の色に対しての知識が深くて、面白そうだと思ったのだ。
 
私は以前から色彩に関して興味があったが、愛読書の源氏物語と結びつけて考えた事はなかった。私にとって重要だったのは主人公の光源氏と女性達の恋模様なので、細かい描写までは思い至らなかったのである。江戸時代には紅花染めがあったのはわかっていたが、平安時代にはどのようにして衣類を染めていたのかはわからなかったので、興味津々だった。
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吉岡さんは植物染めに関しても研究していたが、本に載っている写真を見ると自然からどれだけ美しい色が生まれるのか見る事が出来る。国宝の「源氏物語絵巻」で見る限りでは抑えめの色合いが多いようだが、実際に襲(かさね)の色を再現した写真を見ると紅梅や蘇芳で染めた赤、蓼藍で染めた深漂(水色)など鮮やかな色が多いので、当時の更衣や女御が羨ましくなる。
 
朝廷で女官として勤める分には簡素な衣装で我慢するしかないが、帝に気に入られれば襲をプレゼントされる。身分が高ければ幼少の頃から季節に合った色の衣裳を身に着ける事が出来るが、それは植物をたくさん使わないと染色がままならないからである。
 
植物を採取してから染める事を考えると、染め上げるまでに大変手間がかかるのは想像が出来るし、それだけ貴重だという事も検討がつく。私が一番好きなのは若紫の帖。光源氏の最愛の女性、後の紫の上になる少女が源氏と出会う場面だ。この少女は源氏の恋慕の相手で、父である桐壺帝から寵愛を受ける藤壺の更衣の姪なので、どことなく藤壺の更衣に似ていて美しい。
 
そんな彼女が自分に良く似合う山吹(明るい黄色)と白の衣裳で現れたものだから、一目で心を奪われたのも無理はない。吉岡さんの文を読んでいると10歳の若紫と源氏が出会った時の情景が自然と思い浮かぶので不思議なのだが、若紫がどのようにして当時の最高級の紫草の根で染めた衣裳が似合う女性になるのか、源氏との愛情を育てるのか期待させる場面である。
 
源氏物語の場面とファッションのどちらも楽しめるので、この本を読んだ後に原作を読んでみると、以前より登場人物が身近に感じるかもしれない。
 
(40代女性)
 
 
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