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読書感想文「旅をする木(星野道夫)」

まだ行ったこともない、遠いアラスカの風をふと感じられるような本である。この本を買ったとき、私はまだ新入社員で仕事に行きづまり、閉塞感を感じていた。そんな時にふと書店で目に入り、タイトルが気に入って購入した。もともと私は旅行が好きだったので、この「旅をする木」という言葉になんだか親しみを感じて、それから通勤電車の中ですこしずつ読み進めていった。
 
「旅をする木」は、アラスカを撮り続けたことで知られる写真家、星野道夫氏のエッセイ集である。日本からはるか離れた、厳しいけれども美しい自然が広がるアラスカで、著者がその繊細な感受性で感じ取ったことを、映像のように綴った33篇。どれをとっても、アラスカの空気が立ち上ってくるような手触りの文章に引き込まれ、なんとも果てしない気持ちになる。
 
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ぎゅうぎゅう詰めの満員電車の中はいつも息がつまりそうだったけれど、それでもこのエッセイ集を読んでいる間だけ、私はアラスカにいけた。早く仕事に慣れなければいけない。ミスをしないように、少しでも早く戦力になれるように頑張らなければいけない。
 
そんなふうに、肩に力が入ってガチガチだった当時の私は、「旅をする木」を読んでいる間だけ、別の視点を持つことができて、ラクになった。この本にはアラスカの雄大な自然の美しさだけではなく、常に死と隣り合わせの厳しさや畏れ、親しい人を失う哀しみ、それでも未来を見て生きてゆこうとする眼差し、そういうもの全てが表れている。
 
自分が日常を生きている世界では肌で感じられない、だけど心のどこかで「これこそが一番大切なことなんじゃないか?」とうっすら思っていることが、ぎゅっと詰め込まれているような文章たちに、何度心を救われただろうか。私も、アラスカで生きるカリブーやエスキモーの人々も、本質的には何も変わらない。
 
そういう当たり前すぎることをしみじみ感じるとき、目の前のあれこれに心を圧迫されそうだった当時の私は、ふっと前を向くことができた。そうすると、私も今ここですべきことをひとつずつやっていこう、という気持ちになれた。自己啓発書やビジネス書も読むけれど、今でも心のビタミン剤として、この本は手放せない。
 
きっとこれからも幾度となく読み返すことになるエッセイ集だと思う。
 
(20代女性)
 
 
 
 

旅をする木 (文春文庫)
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星野 道夫
文藝春秋
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