読書感想文「謎解きはディナーのあとで(東川篤哉)」
この話は財閥の一人娘、宝生麗子の目線で書かれてるが、その麗子を唯一馬鹿にした言動をする執事影山、そして勘違いも甚だしい麗子の上司である風祭警部の目線がところどころ入っており、その掛け合いが非常に面白い。
小説なのにもかかわらずテンポが良く、一気に読んでしまうことができるのである。また、犯罪現場を見て誰もが思うような平凡な感想を抱く麗子に対し、いつも麗子を馬鹿にする影山の「お嬢様はアホでいらっしゃいますか」などの言葉が毎回違い、さらに思いがけないタイミングで出てくる。
そのため、例えすべてのストーリーは「麗子が中身のない推理を披露し、影山が麗子を馬鹿にし、影山が事件を解決する」という軸であることは変わらないのに、どの話を読んでも先が分かってしまうなどののマンネリ感は一切なく、どの話も面白いと感じられる。
そして、事件そのものは非常にシリアスでかなり本格的な推理小説なのにもかかわらず、難しい、分かりにくい、といったことがない。テンポよくストーリーが書かれていることもあり、登場人物のキャラクターが非常に愉快で、また、彼らの目線で書かれているために分かりやすい。
風祭警部に対する麗子の突っ込みや、麗子に対する影山の突っ込みにはつい笑ってしまう個所も多い。風祭警部が口にするような推理はだいたい間違っているから、風祭警部が口にしたことと逆の推理をすることが大切だと内心考えている麗子や、麗子の話を聞きながら遠慮なく嫌みを述べつつ、
その反面、麗子の機嫌をうまくとろうとする影山のやり取りは全てのストーリーにおいて違った形で表現されているため、どれだけ3冊読んでも飽きることがないというのは素晴らしいと言えるだろう。
そして、麗子と影山は非常にお互いのことを理解し合っており、3冊目ではロマンスさえ感じられる関係になるにもかかわらず、この二人は決して恋人にならないところもストーリーの面白みを欠かない重要なポイントになるだろう。
(30代女性)
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