読書感想文「コーヒーが冷めないうちに(川口俊和)」

私はいつもどんな本を買うか決めて本屋に行くわけではない。暇な時にふらっと立ち寄り、気になった本を手に取りパラパラとだいたいの内容を読み、購入するかどうかを決める。だが、この本はタイトルと表紙の雰囲気、それから帯に大きく「お願いします、あの日に戻らせてください。」と書いてある。それだけで購入を決めた。私自身、戻りたい過去でもあるのだろうか、と思いながら、早速読んでみた。

 

すごく面白かった。登場人物の親しみやすい名前と、目に見えて動き出すような、表情まで細かく想像できる。一話の恋人話。恋人がいる私はこの冒頭のシーンにすごく共感してしまった。何か言いたげな相手と、それを分かってその言葉を待つだけのもどかしい時間。

 

でも私は、二美子のようにこんなに潔く拗ねることはできないな、とも思った。そんな恋人同士の空気感と、この喫茶店の雰囲気に最初から吸い込まれた。彼が行ってしまったあと、二美子が一週間後にまたそこを訪れてしまったのは、二美子もこの喫茶店が気になったからではないかと思った。

 

実際に文章を読んだだけで、すごく気になる。さすがに女の勘は鋭い、この喫茶店の秘密を教えてもらってからの二美子の行動は早かった。この行動力は見習いたい、と心から思った。『過去に戻れる』と言われた時、すぐにその決断を下すことは私にはきっとできないと思う。

 

しかし、突然幽霊が出てきたことは本当鳥肌が立った。入り込みすぎて、すぐに情景が浮かんでしまったから余計ゾッとした。幽霊に呪われかけても、たくさんの条件を突きつけられても、それでも戻る、戻って本当のことを知りたいと決意した彼女は本当に強い人だ。

 

第二話、夫婦の話。夫が若年性アルツハイマーになる話。色々なことを忘れていく恐怖と戦う夫、そんな夫を不安にさせないようにと支え続ける妻。この関係は、すごく憧れた。同時に、常に支えてくれる家族や友人や恋人を思い出し、心から感謝した。お互いに、同じように大切に想っている。どんなに不器用でも、いつかきっとその気持ちは伝わると思った。だから、大切な人達を大切にすることをいつも、絶対に忘れない、そう心に誓わせてくれた物語だった。

 

第三話、姉妹の話。自分にも姉がいるから、すごく心に染みた。何年も素直になれずに妹に近づけない八絵子は、昔の私と似ている。本当は大切なのに。思春期だった私は、素直になれずに姉と仲良く出来なかった。似ている。

 

唯一違ったところは、私は姉に会えるということ。この物語では、八絵子は妹に会えなくなる。自分のせいでと八絵子が自分を責めるシーンは本当に辛く、一度本を閉じてしまった。最終的に、自分が本当に戻りたかったであろう場所に戻れたから、よかったのかもしれない。でも、失ってからじゃ遅い、というのは正にその通りで、居なくなってしまっては、触れられなくなってしまっては、本当に遅い。

 

いつ何があるか分からないが、日々の中で大切な人へ、素直な気持ちで接することは、難しいけど、大事にしたいと思う。第四話、親子の話。まだお腹の中の子供に、愛情を捧げ、絶対に産むと決めている女性。産めば自分の命があぶないと分かっているのに、産むと決めた女性。母親は、本当に強い。私は考えた。自分の命を犠牲にしてまでも、守りたいものとは。

 

自分命を犠牲にしてまでも、本当に守ることができるのか。きっと、ある。そう思える人やものがあること自体、すごく幸せだと思える。この物語の親子は、何年経っても愛し合っている。自分もそうでありたい、大切なものをずっと愛し続けていきたいと思った。

 

この本は、それぞれの話はが分かれているが、物語は繋がっている。登場人物はみんな温かい。何度も読み返しているが、その度に涙は出てくる。不思議なものだ。

 

この感動を自分だけで味わうのはもったいないから、家族や友人にプレゼントする予定だ。私の住む世界では、過去には戻れないし変えられないけれど、未来なら変えられる。いつ何があっても後悔しないように、大切の人を大切にすること。言葉で想いを伝えること忘れずに生きていくと、決めた。

 

(20代女性)


 

 

 

 

タイトルが気に入ってこの本を読んでみようと思ったのである。珈琲が冷めない時間でどんなことが起きるのか、どういう事が起こるのかわくわくしたのである。コーヒー屋の一か所だけが、時空を超えて過去に戻れるという単純な話だと思ったが、その店に過去に来ている人間のみがその体験をすることが出来るのだ。

 

店のその席から動くことも出来ない、戻る過去にそこで何かのドラマが起きなくては、戻る意味もないのだ。それでも、人はそこから過去に戻って、コーヒーが冷める前に自分の思いを伝えに戻るのだ。

 

まず、戻り方が斬新で特定の席だけが過去に戻れる唯一の鍵なのだ。そしてそこに欠かせないコーヒーというアイテムだ。そのコーヒーが冷めてしまわないうちに、自分の思いを相手に伝えなければならない。でもその席からは動けないのだ。もちろん、相手に何をしても過去が変わることもないのだ。

 

そして、ここが一番の難関である、その席に幽霊が座っていて隙を見て座ることしかできない過酷な状況にあるのだ。コーヒーが冷めてしまう前に飲み干さないと今いる時間に戻ることが出来なくなるのだ。こんな過酷な状況でも、過去に戻ってやりたい事があるのだ。

 

その席の幽霊は、亡くなった旦那さんと会うためにその席に座ったのだが、コーヒーが冷めないうちに飲み干すことが出来なかったのだ。だからその席にずっと座っている。無理やりどかそうとすると呪われてしまうのだ。幽霊がトイレに行くときだけがそのチャンスである。

 

恋人と別れ話をした1週間前に戻って、彼と話が出来た彼女の現実は戻っても現状は変わらないのだが、未来につながる彼の言葉を聞き、未来を変えられると確信をもって帰っていったのである。色々な人が、色々な思いでこの店の過去に帰るルールを受け入れて、過去に戻って自分の思いを伝える機会を作るはなしなのである。

 

恋人同士であったり、認知症を抱えた夫婦であったり、これから死んでいくことが分かっている店主の妻のおなかにいる子供へのラストメッセージであったりと感動する話になっていくのである。

 

(40代女性)

 

 

 

 

コーヒーが冷めないうちに
川口俊和
サンマーク出版
売り上げランキング: 1,219

 

 

ブログをメールで購読

メールアドレスを記入して購読すれば、更新をメールで受信できます。

 

 

川口俊和作品の読書感想文はこちら

コメントを残す

シェアする