『舞姫』などでも知られる日本の文豪、森鴎外の長女である森茉莉の作品。幼い頃から父親の鴎外から、蝶よ花よと愛情を注がれた生粋のお嬢様育ちの森茉莉。この作品では、そんな森茉莉の幼い頃から成人以降までのファッションに対する独特の価値観を、森鴎外の娘らしい美しい日本語で綴られている。
更に、作中では森茉莉を溺愛する鴎外の様子も事細かに描かれており、これまで抱いていた森鴎外のイメージとはまた異なる人物像を垣間見ることができる。作中の第一章・幼い日のお洒落では、特に鴎外の森茉莉に対する愛情振りが伺い知れる。
もちろん金銭にゆとりのある家庭でなければできないことであるが、まだ小学生の茉莉のために時々ドイツから見本を取り寄せては、彼女のために上等の洋服と帽子を誂えてやるのだ。その幼い頃の洋服を、まるで今も目の前にあるかのように事細かに説明されているところから、森茉莉の父親への憧憬と当時から既に一人の女性としてファッションに対して高い関心を払っていたことが分かる。
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そんな作中で、森茉莉という一人の女性作家の感性に最も触れることができるのは、第二章からの巴里のお洒落だろう。父親の鴎外から勧められたというフランス文学の学者あった夫と共に、フランスへ1年に渡って暮らした思い出は、森茉莉の心をいつまでも捉えて離さない。作中でも、こんな一文がある「私は時々ふと、一年近く暮らした巴里を切なく、胸に思い描く。」
パリの香水店、百貨店、珈琲店・・・大人になっても少女のように無邪気で美しいものを何より愛した森茉莉にとっては、パリという街はある種の心の故郷であったようにも感じられる。パリで暮らした経験がある人も、パリには一度も行ったことがないという人(これは私であるが)でも、作品を通して彼女の見たパリの風景が目の前に浮かび上がってくるような錯覚に陥る。
結局、彼女は事情により夫とその後、離婚。晩年は生活にも困窮し、パリで買ったお気に入りの香水やダイヤモンドなどの宝石も手放さなければならなかった。そんな、かつての贅沢三昧な日々からは一転してしまった彼女であるが、時々昔のことを懐かしんでは自分のできる中でオシャレを楽しむ作中での様子に、周りの流行に流されず、自分のこだわりのファッションを磨く重要性に気づかされた。
(20代男性)
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