硫黄島での壮絶な戦闘と二万余の兵士の方々の日々。栗林忠道中将という人物について。これら一切を全くの無知のまま、本著を手に取り、読み進めた。何の気なしに立ち寄った書店で、表紙の栗林中将と正に目が合い、購入して帰り、その晩はあと一節、あと一節となかなか切り上げられなかった。引き込まれるように読んだのは久々だった。
この本を読み、読後残ったのは、これを知らないまま生きる訳には行かない。という使命感だった。二万もの人々が、本土の国民の為に、あのような地獄の島に噛り付いて戦ったという事実。そこから絶え間無く時間が流れて、今現在の自分に続いていると言う事実。ありのままの事実にただ打ちのめされた思いがした。
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戦争はいけないだとか、平和を守るだとかとは違う読後であった。平凡な毎日を繰り返していた自分と決別しなくては、この島の人々に申し訳ない。そんな思いが渦巻いては飲み込まれそうな感情の渦が出来た。何より、硫黄島と近しき地獄が当時世界中にあったという事を、どうしても忘れてしまう事にも、歯痒さを感じた。
世界中にボコボコと現れた地獄に、沢山の命が飲み込まれて、それは昔話でも他人事でも無く、今現在の自分の命に繋がっている。その尊さに打ちのめされる思いだ。元々、戦記物が好きで、時々読んではいたが、本書は丁寧に日常が描かれているためか、想像が容易い。自分の父が、主人が、息子が…と想像してしまうと、その背景にいた家族の苦悩や悲しみまでが迫ってくる。
戦場に居たのは、ありふれた父であり、夫であり、まだ幼さの残る息子だった。その彼らの余りに大きい犠牲の未来を生かされているという以外の感想が出てこない。そして、自分の足元が頼りなく、申し訳なく思ってしまうほどであった。忘れてはならないし、語り継がなくてはならない。そんな使命感に突き動かされる一冊であった。
戦争の記憶を語り継ぐ大切さを、沢山の先人たちが説いている。それは何故なのか、その答えが導き出される一冊であった。
(30代女性)
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