読書感想文「ムーミン谷の仲間たち(トーベ・ヤンソン)」

人間関係の悩みは、生活していくうえで免れられない。心が疲れて今夜はちょっと一人になりたい。そういう時に本棚の「ムーミン谷の仲間たち」を引っ張り出す。ムーミン童話シリーズのうちの一冊のこの本は、ムーミンと聞いて一般的にイメージされる楽しく、仲良く、ほのぼのという話は出てこない。
 
9つの短編の主人公たちは皆プライドが高かったり、委縮して自分を出せなかったり、独占欲が高かったり、自我を持て余していたりと、まわりと全然協調していない。そして、周囲の人々を困らせる、このロクでもない人格の主人公たちの在り方は、疲れている私の心をとても癒してくれる。
 
周りの人を困らせているのは分かっている、でもこれが私なんだから仕方ないじゃない!と開き直った主人公たちに、自分の気持ちに正直であることの大切さのようなものを教えられる。もちろん、実生活ではこの本の主人公たちのようにはふるまえない。社会的立場を考え、空気を読み、周囲との摩擦をなくす努力をしなければまっとうには暮らしていけないのだ。

 
 
特にいまの日本では。それはひたすら社会の一員としての自分を維持することであり、心の奥底にいる本当の自分は無視され続けることである。だけど、一日を「日本の社会人」として無事にやりすごしたら、眠るまえぐらいは「本当の自分の心」と一緒に過ごしてもいいんじゃないかと思う。
 
ムーミン谷の仲間たちにでてくる人たちみたいに、自分の気持ちのままに暮らしている自分。「私の心は、私のもの」という安心。明日の朝になったら子供みたいな自分の心とはいったんお別れだけど、でもとにかく今は本当の自分の心がここにある。そう思いながら眠りにつく。
 
日中、上司と部下にはさまれて冷静に役割を果たす私の心の奥底にはいろんなムーミン谷の仲間たちが住んでいる。そう考えるとちょっと楽しい。私の心のバランスを心地よく引き戻してくれる、「ムーミン谷の仲間たち」の文庫本は私の本棚の隅っこ、そして心の中にいつでもひっそりと在る。
 
(30代女性)
 
 
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