読書感想文「襲名犯(竹吉優輔)」

この本は2013年に単行本で発売され、2015年に文庫本で再刊されたもので、単行本も購入していた私としては、加筆修正部分が気になって読み進めた。もちろん、江戸川乱歩賞を受賞した作品であったこと、図書館で働いていたため、主人公が司書という設定も気になっていたのではあるが。

 

作者自身も図書館司書として働いているということで、図書館の描写は実に細かいところまでよく描かれていた。世間一般にあまり知られていないが、図書館サービスの中では重要なレファレンスサービスの内容を説明してくれて、普段、カウンターで暇そうにしているというイメージを持たれがちな私たちとしてはありがたいと思っている。

 

小説の中身については、犯人は誰なのか、ということもさることながら、主人公、南條仁の周りで起きた事件と14年前の猟奇的殺人事件がどう絡んでいくのか、というところも興味深い。描写がグロテスクな部分も多数ありながら、それでも読む気を失せさせないのは、一緒に謎解きをしたい、そう思わせる文章と主人公・南條仁の背景だと思う。

 

 

主人公の仁が亡くなった兄の身代わりとして養子にもらわれたこと、最後まで義母に愛されなかったこと、ブージャム新田の三番目の妻の祐子にまで、双子の弟である信の身代わりと言われてしまったこと。

 

そんな仁の不安感、否定される存在など「切ない」要素が印象深く描かれていると思う。後半、彼が自分を襲うものは自分の弱さと気づいていった流れはよかった。また、不器用に真実と対峙しようする仁の描き方も20代の若さを感じられ、好感が持てた。

 

しかし、襲いかかる現実、まさかの犯人が友人という裏切りには衝撃を受けた。読み進めていくうえで、犯人はこの人なのでは、そう思わせる人は何人かいたのに、まさかの友人、下野。

 

その事実を受け止めなければいけなかった仁、その苦悩を思えば、本当に仁には同情したくなるほどだが、その苦悩を乗り越え、律と明るい春を迎えそうな終わり方に少しほっこりした。

 

(30代女性)

 

 

[amazonjs asin=”4062931680″ locale=”JP” title=”襲名犯 (講談社文庫)”]

 

ブログをメールで購読

メールアドレスを記入して購読すれば、更新をメールで受信できます。

 

 

コメントを残す

シェアする