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読書感想文「月山・鳥海山(森敦)」

生と死について考えたことがある。日常生活において、それらのことはさして意識しない。それはまだ自分が若いと思っているからかもしれないし、無意識の内にそれらのややこしい問題を遠ざけようとしているからかもしれない。しかし、この本を読んで私は改めて、生きること、そして死ぬことについて考えさせられた。
 
物語は単純で、主人公が山寺に篭り一冬を過ごした体験を語ったものだが、その地で生きる人々の様が、ありありと浮かぶように描かれている。私は都会すぎず田舎すぎず、中途半端な土地に生まれ育ったため、この本に描かれているような生活は、共感するところもあれば、まったく理解できないところもある。
 
特に私は雪が降らない地方の出身のため、雪の描写については、実感として得られないものがあったと思う。しかし、そのように「田舎」や「雪」について実体験として知らなくても、どこか懐かしさを感じられるような文章であると感じた。どうして知らない景色を知っているような気がするのだろうか。
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それを考えていくと、この本の中に出てくる登場人物達は、どこにでもいるような普通の人々だということに気がついた。特別な力がある訳でもなく、かといって何もできない者たちでもない。ただ、日々を生きている人々として、物語の中に存在している。そして主人公も、変り者であると感じたけれど、特別に変人である訳でもない。
 
だからこそ、この本は自分の身近にあるように感じられるのだ。ストーリーもどれも単純で、どこにでもある風景を描いているからこそ、読む者は自分の生活について、思いを馳せずにはいられなくなるのだろう。私も例外ではなく、生まれた地のこと、そして今生きている地のことについて、考えた。
 
私は特別な人間でもなく、どこにでもいる普通の女性だ。だからといって、世間に埋没しているように見えて、私には私なりの人生があり、生き方がある。そのような想いに、この本を読んで思い至ることができた。生きている者はいつか死んでいく。しかし、その背景には、その人にまつわるさまざまな物語があり、それを共有していた多くの人間が見え隠れしている。
 
そのことに気づくことができたので、私はこれからも、平凡ではあるかもしれないが、自信をもって、自分の道を歩んで行こうと決意した。それが一生懸命に生きることであると思うし、そうすることこそが美しいと、この本が教えてくれた。
 
(20代女性)
 
 
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