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読書感想文「男子の本懐(城山三郎)」

昭和4年に総理大臣に就任した濱口雄幸と浜口に乞われて大蔵大臣に就任した井上準之助を中心としたとした物語。冒頭は前内閣の田中儀一内閣が倒れたところから始まる。続いて、濱口と井上の生い立ちや性格、二人の出会い、組閣に至るまでが描かれていく。
 
組閣してからの二人には経済政策と軍縮という難関があるが、最終目的は金解禁だった。昭和5年の金輸出解禁は、今の評価からすれば失敗という事になっている。しかし、なぜ金の輸出を解禁しなければならなかったのか。
 
為替変動の影響で不安定になっている国内経済を安定化させる意図もある。しかし大きな理由の一つとして、その当時残っていた多額の借金、日露戦争の時に戦費を調達するために発行した外債が残っており、償還できるだけの経済力のない日本は借換えしてもらうしかなかった。
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その為にも金解禁して通貨安定国として国際的な金融ルールに参加し、信用を得る必要があった。そうした切羽詰まった事情を考慮せずには当時の濱口や井上の心情は分からないと思う。この事は日露戦争の外債はいつ償還し終えたのか調べるきっかけにもなった。
 
詳しい数字は差し控えるが、以外にも太平洋戦争も終わった後随分経ってからの様である。また、政治家以前に人としてのあり方についても考えさせられる。濱口が専売公社時代に九州へ左遷されていた時に、自宅で使うために買った自分の机を運んでいる。
 
それを見かけた部下が手伝おうとするのを、これは自分の荷物だからと言って手伝わせなかった。同じ様に、井上準之助は日銀総裁時代に、秘書は日銀総裁の秘書であって井上の秘書ではない、と私用に使うことはなかった。
 
たまにゴルフに誘うときに「明日は何か予定はおありですか」と秘書としてではなく一個人として伺いをたてている。明治という時代に育った人共通の人間性なのか、この二人が特に際立っているのか、公私の区別については厳しいくらいに明確でした。
 
何の為のお金で誰のお金なのかけじめの緩い、どこかの国の政治家にも是非読んでもらいたいと思った。
 
(50代男性)
 
 
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