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読書感想文「旅で眠りたい(蔵前仁一)」

「旅」と聞いて私が想像すること。それはまるで元からその土地の人だったのではないかと思うぐらい、現地の生活を楽しむということ。土地の人と同じ店へ行き、同じものを食べて観光用のガイドブックに載っていなさそうな場所へも行く。
 
そこには、きっととんでもない発見があるだろう。そう考えるだけで、胸がざわめく。私は10年以上前ではあるが、エジプトへ行ったことがある。しかし、個人旅行を楽しむ勇気はなく、ツアーを利用した。
 
自由行動の時間がついており、その時間だけはツアーから離れていろいろな店へ入った。今までの人生の時間の中で、その時間はわずかではあるが、今思えば驚きの連続であった。
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豚肉がそのままの形で吊ってある店、エジプシャンたちが何人も集まり、観光客である私のほうを見ながら水パイプを吸っている光景、「落としても割れないよ」と実際に落として見せてくれる香水瓶の店。しかしなんと、香水瓶は割れてしまったのだが…。
 
言い出せばきりがないほどの、ワクワク感とドキドキ感を味わった。もちろん、楽しさばかりではなく、ちょっと怖いと感じたこともあったけれど。この本を読むと、暇があると地図帳や旅行パンフレットを、普段から広げている私はいてもたってもいられない気持ちになる。
 
いつか私も、著者のような旅をしてみたい。著者は身の回りのものをなるべく少なく鞄に詰めて旅をしている。宿泊場所も行き先も、現地に着いてから考える旅をしている。周りの景色を見ながら、現地の人々と触れ合って、身振り手振りでコミュニケーションをなんとなくとり、好きなものを食べながら、自由気ままに旅を続ける。
 
私は、著者の本を読むと、いつも「なんて素敵なんだろう」と素直に思う。異国の地へ行くと、日本の常識は必ずといっていいほど通用しない。当たり前のことだとは思う。日本では絶対にありえない、と自信をもって言えることでも、通用してしまう場合も少なくない。
 
例えば、ホテルのベッドにチップを挟み、外へ出る。部屋の清掃員はたぶん決まっていると思うのだが、そのチップを狙って担当ではないだろう清掃員が私と入れ替わりに笑顔で入り、チップだけ取って行く。それを多くの部屋で繰り返す。
 
私の部屋の清掃担当の方が入ったときには、もうチップはないということ。日常茶飯事なんだろうとは思ったけれど。愕然とすることもあるが、考えようによってはそれも文化の違いであり面白くも興味深くもある。
 
著者のような旅のスタイルを取る人々を、バックパッカーと呼ぶが彼らが1番その楽しさを知っているのだろう。例えば、インドには難民と言われる人々が、何百人も国際空港の玄関で寝ているらしい。
 
それに、ホテルとはいっても、体育の授業で使うマットのようなベッドだったりするという。嫌というほど、生活のにおいを感じることができる。日本人は、このような生活に対してきっと、ぞくっとするだろう。私もその1人だ。
 
しかし、インド人からすると「普通」なのである。これもまた、バックパッカーたちにとっての1つの醍醐味なのだろう。価値観や考え方は国によって勿論異なってくる。自分の国のものさしで他国をはかることはできない。「旅」は、それが身をもって体験できるものの1つだと言えるだろう。
 
著者の作品は、いつでも私を旅に誘ってくれているような気がする。何も飾らず、そして視線がいつも一般庶民の高さだからなのかもしれない。それに、どんなことでも愉快に生き生きと描かれている。本当にひどいと思われるホテルに泊まったこと、旅行代理店とのトラブルなど、どれも貴重な経験と化している。
 
特に今回はアジアが舞台なので、アジア特有の事情を少しだけでも知ることができた。教科書、資料集、そして市販のガイドブック。たくさん読んで、知っているつもりになっている国なのに、それが本当の姿というわけではないだろう。もっともっと現実のアジアと向かい合ってみたいと感じた。
 
(30代女性)
 
 
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