日常に潜むモヤッとしたものを代弁してくれた感じがする。純粋に物語としてもとてもおもしろく読めた。主人公の顔がだんだん旦那に似てくる、という不思議な現象が物語の軸になっているが、これにはものすごく共感できた。
もちろん現実では、実際に明らかに顔が変わるということはないが、一緒にいる人に影響されるということは多分にある。特に恋人や配偶者だと影響が大きい。主人公が、今の旦那だけでなく、これまで付き合ってきた男性たちの趣味などを吸収してしまうというようなことを考えているが、自分にも当てはまるので頷いてしまった。
人によるが、女性は特にこういう性質を持つ人が多いのではないだろうか。私は付き合った男性の好みに合わせて服装や髪型を変えたりするし、彼が好きな音楽を聴いたり本を読んだりするうちに、自分もそれが好きになっていたりする。
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そうすると別れた後も、自分の一部は彼でできているような気がするのだ。そうやって知らず知らずのうちに自分が彼に近づいていくというのが、この作品を読んでよくわかった。しかも物語では、初めこそそのことに恐怖感のようなものを抱いて警戒しているものの、結局主人公は受け入れる道を選ぶ。
顔がそっくりになってもいいじゃないかと思うことにするのだ。この選択は意外だったが、影響されることも悪いことではないのかもと思えた。よく考えれば、むしろ自然な気もする。人に合わせるほうが楽な時もあるし、夫婦だから二人で一人というのも素敵かなと思う。
ただ、そう思えたのは主人公がそのことを近くしたうえで受け入れたからであって、気づかないうちに自分が無くなってしまったら怖いなとも思った。しかも物語の旦那はあまり自主性がないというか、怠け者で人生を諦観しているところがある。
そういう人に無自覚のうちに引きずられてしまうと、後戻りができなくなるかもしれない。この物語で何と言っても好きなのはラストシーンだ。ずっと現実が少し奇妙な感じで語られてきたのが、一気におとぎ話のようになる。
旦那が変わったのがどうして芍薬なのかはわからないが、イメージとしてとても美しいので感動した。物語を読んでいる間、基本的に旦那はどうしようもない人だなという印象を持っていて、主人公の足を引っ張っている感じがして好感は抱けなかった。
ところがラストで、好きな姿になりなさいと言われて芍薬になった時、旦那は旦那でだいぶつらかったのではないかと気づいた。私は女性なのもあり、主人公の目線で考えていたので、ずっと一緒にいても相手のことはわからないな、と反省してしまった。こんなふうに、現実と幻想が交差するような作品は大好きなので、またぜひ読み返したい。
(20代女性)
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