読書感想文「あなたがもし残酷な100人の村の村人だと知ったら(江上治)」

現在の日本をとりまく様々な残酷な真実を余すところなく伝えた良書だと思う。日本の総人口は現在のところ1億人を超えているが、もしこれが「100人の村だったら」と仮定し、そのうち「13人が子供で、61人が働き手で、・・・」とわかりやすく比率を教えてくれている。
 
そう遠くない将来、子供と働き手が急激に減少し、老人だらけの国になること、子供の虐待がどのくらいあり、自殺者はどのくらいで、どれほどの家庭が生活苦にあえいでいるか、などすべてを具体的に数字を挙げながら説明してくれている。日本を取り巻く残酷な現実の数々は、日々ニュースでも伝えられている。
 
しかし情報がいちいち断片的なので、私はこれまで本当にその深刻さを理解したこともなければ、全ての情報を関連付けて考えてみたこともなかった。しかし、この本に出会って、30年後に現在の働き手がどのくらい減って、老人の数はどのくらい増えて、国の借金は毎日どのくらい増えていて、生活が苦しい世帯の割合はどのくらいで・・・
 
いっぺんに数字を出されて説明されると、これほどの深刻な状況だったのかと頭を抱えたくなる。非正規労働者が増えているとか、学費を払えない女子大生が水商売で働くケースが珍しくないとか、3分の1の世帯が貯金できていないとか、ちらと雑誌やニュースで見聞きしたとしても、自分の生活と関連付けて考えなければ人はなかなかその問題に向き合うことはできない。

 
 
しかしこれほど具体的に数字と、割合と、将来の悲惨な展望を「まとまった資料」として突き付けられると、それらのいつか聞いたニュースがにわかに現実味を帯びて、しかもより深刻に身に迫ってくる。全ては関係のあることなのだと思い知らされる。挙げられた数字はどれも残酷なものだし、この国の将来の展望も悲惨としか言いようのないものだが、それでもこの国で生きていくために何をするべきか、目が覚めた思いがした。
 
思考停止したまま日々を漫然と過ごす余裕はとっくになくなっていたのだと気づいたことは、辛いことではあるが救いでもある。悲惨な未来を乗り切るために、勉強でも仕事でも、今の自分にできる限りのことをしよう、そしてもっと成長して強くなろうと奮い立たせてくれた一冊である。既述したように、これからこの日本がどういう状況になるか具体的に数字を挙げて説明されることで、いまの日本の状況を簡単にとらえることができて非常にわかりやすい。
 
「100人のうち何人が非正規社員で・・・」といった話のほかに、生活保護受給者数が現在どのくらいで、これからどのくらい増えるか、などの具体的な本物の数字もある。そしてそれらがどうして増えたのか、昔と比べてどうなのか、といった歴史的なことまで教えてくれるので、視点が今に固定されず非常にわかりやすい。
 
数字だけを上げられるといまいちピンとこないし、特に私のように数字だけに感情的に反応してしまう人間は問題がどこにあるのか把握しづらいが、このようにされると問題を現実のものとして冷静にとらえやすくなり、非常に良いと思った。具体的に様々な問題を提示し、展望を示してくれたことはありがたいが、既述のように暗澹とした気持ちになることを免れない本である。
 
後半部分ではそんな未来をどのように乗り切るべきか、今私たちに何ができるのか、具体的に説明してくれている。お金に対する考え方とか、人間関係の捉え方、人生観までも、これからどのように変えていけばいいのかという示唆に満ちた話で、非常にわかりやすい。ほとんどの大人は思考が硬直しきっていて、自分を振り返ることも、自分の考え方を変えることもなかなかできないと思う。
 
ここまで我々日本人が自分自身を追い込んだのはまさにその思考の仕方に原因があるのだと思い知らされる。書いてあることはいちいちもっともだし、確かにそうするほかないと思わされるが、古い価値観を捨て去り受難に生き方を変えることはほとんどの人にとって難しいだろうと思う。
 
痛みを伴ってでも変わらなければ本当に未来がないのだと、この本の前半で揚げられた具体的な数字で嫌というほど知らされた私は、今からでも生き方を変えよう、変えなければならないと腹をくくる気持ちになった。そして何より、これまで漫然と過ごしてきた日々の中にいかに学ぶべきものがあったか、これからどれほどのことを勉強していかなければいけないか、を思い知らされた。
 
社会の思惑に乗って、何となく生きていけば間違いはない、と思い込んでいる日本人は数多い。しかしこれからは本当に自分自身と、人生を見つめ、考えなければ生きていけない。学ばなければいけないことは数多いが、これまで漠然としたイメージしかなかった金融のこと、世相のこと、一から真摯に学びなおし、これから自分がこうした社会にどう食い込んでいくのかを考えたいと思った。
 
「これからこんな世の中になりますよ」という情報だけでは、おろおろするばかりかもしれないが、これから生き方を変えるための処方箋のようなものまで添えてくれたことがありがたかった。お金に関する記述はとても具体的で素人にも分かりやすい。私のように金融に全く明るくない人間が、どのように資産形成をはかり、どのように働くという行為を捉えたらよいのか、示唆してくれたことはありがたかった。
 
本の最後には日本の話から離れ、私たちの人生をあまりにも大きく支配している「お金」とは一体なにか、ということに話が及ぶ。お金というものがもつ様々な機能、そしてお金が世界中の人々にとっていかに特別な存在か、そしてこれからどのように変貌していくのかを述べていて、とても勉強になった。私にとっては非常にわかりやすい簡潔な説明だったし、これからこの分野に知識を深めていくための導入としては十分すぎるくらいだった。
 
もちろん、直接いまの日本の現状とは関係のない話だし、お金に特化した話だけに専門的になっているところもあるので、全てをいま理解する必要はないと思った。しかし、これまでお金にも、金融の世界にもあまりにも無関心だった私が「ああ、こういうことだったのか」と理解し、その世界を理解するのは、これから生きていくうえでどうしても必要なことだと思う。それはこれから私の生きる世界が、この本の予想ほど悲惨なものでなかったとしても同じことだと思っている。
 
良書を読んで、心機一転頑張ろうと決意しても、時間が経てば惰性的な思考に流され、結局何も変われないのがこれまでの私のパターンだったが、今回この本を読んで得た知識、そして衝撃はいつまでも心に突き刺さったままで、消える気配もない。希望に溢れた話ではなく、警告の書だったからこそ、その時の暗澹たる気持ちがいつまでも消えないのだろうと思うが、この痛みを忘れないようにして日々の生活をどんどん変えていこうと思う。
 
(30代女性)
 
 
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