読書感想文「サンマイ崩れ(吉岡暁)」

主人公はウツと離人性人格障害とパニック障害を持っている、ゴマ君というやたら饒舌な若者だ。この変な若者が最後まで物語を引っ張っていくので楽しく読めた。若者は熊野の病院の精神科病棟で過ごしているのだが、ある日台風の豪雨による土砂崩れに巻き込まれた。
 
その日の明け方にゴマ君はこっそりと病院を抜け出したということなのだが、精神病棟の患者がいとも簡単に抜け出せてしまう状況に、最初違和感を覚えた。あっさりゴマ君が精神病棟から抜け出せた状況や、生きてるのか死んでるのかわからないという本人談、その後の町人に話しかけても素通りされてしまうという、ゴマ君の存在感の希薄さにである。
 
そのときはまだゴマ君の正体がなんなのか分からなかった。さて、熊野の町に出ると、土砂崩れによりシモナザ地区で死者多数という大惨事となっていた。ゴマ君は復興ボランティアしたいと意欲を見せて町の災害対策本部へ乗り込むのだが、誰も取り合ってくれない。

 
 
 
そんな中ワタナベさんという明治生まれの老人だけが、ゴマ君と会話をしてくれた。するとシモナザ地区の上流のカミナザで、サンマイと呼ばれる墓地が崩壊して、人骨が露出しているという話が入り、ゴマ君はワタナベさん、そして地元の消防団員といっしょにサンマイへと山の古道を歩いていくことになった。
 
道中でワタナベさんは熊野の仏教と神道についての由来などを話して情報通ぶりを披露してくれる。熊野の集落、山林、サンマイの様子が容易に想像できる一作であり、読んだ後に熊の情報を再確認して役立てることにもなった。
 
ゴマ君はワタナベさんについていくのだが、この頃になってもゴマ君という存在が普通の人間とは違っているということにまだ気づけ無いのだった。物語の最後にサンマイにたどり着くのだた、ゴマ君とワタナベさんは予想もしない最後を遂げることになった。
 
消防団の若者もわけもわからずワタナベさんの言うがままに対応してしまった。ワタナベさんはお導きというのだが、死者多数が出て、ゴマ君が目の前に現れて、サンマイ崩れが起きたと聞いたたとき、こんな最後を迎えようと決意したのだろう。
 
しかし無理やりワタナベさんの信念に巻き込まれた感じのあるゴマ君と消防団員は、多少かわいそうな感じがあった。
 
(30代男性)
 
 
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