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読書感想文「史上最強の内閣(室積光)」

久しぶりに一気読みさせられる本に出会った。室積 光著「史上最強の内閣」。もしも現在の日本に坂本竜馬が生きていて外務大臣を務めたら。文部科学大臣が新門辰五郎だったら、豊臣秀吉が経済産業大臣だったら、今の日本はどのように違っていたか。
 
世界の国々のトップと堂々と渡り合い、日本人としての意地と人情を貫いてみせる。そんな「if」を思わせる設定がてんこもりである。笑った。スカッとした。なるほどとうなり、涙した。バカバカしいほどありえない夢だからこそ、地に足をつけながらも忘れてはいけない。そんなことを考えさせられた。
 
物語は北朝鮮のミサイル燃料注入事件に始まる。未曾有の危機に、甘やかされた二世政治家では対応できず京都に秘められてきた一軍内閣「二条内閣」が呼び覚まされた。歴史上の人物に模されていると思われる各大臣の言葉や行動の破天荒ぶりが痛快である。
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経済制裁を中止しなければミサイルを発射すると脅してくる北朝鮮の某将軍に対し、広島弁でタンカをきる山本軍治(ミスター赤ヘル山本浩二さんがモデルだろうか)防衛大臣には胸がすく思いを味わった。某国の言動について、ニュースを見ながら内心「ビシッと言ってやれ」と思わない日本人はいないのではないか。
 
しかし、ここまでやってくれるとたとえフィクションでも国際問題にならないかと心配になってくる。大臣たちはそれほどの無茶を連発するが、皆人情にあふれていて本当に好きだ。初めて一国民として国に守られているようにすら感じてしまった。
 
もっともハッとさせられたのが「9条を広めないと、攻めに出ないと」という二条友麿首相の一言である。「戦争の放棄」「戦力の不保持」「交戦権の否認」を掲げる憲法9条については、戦争を免れる免罪符のように考えていた。この条文さえなくさなければ日本は二度と悲惨な戦争に関わらなくてよいのだ、と。
 
だが二条首相は言う。「9条を守るだけじゃダメやないですか? 9条を広めないと、攻めに出ないと」。日本だけでなく世界の国々に平和憲法を持つよう勧める。軍隊を作る費用があるなら豊かな国にするためできることがたくさんある。最初は小さな国から始めて徐々に広めていけばよい。そして世界中の国から軍隊がなくなれば世界平和が実現できるではないか。
 
現実は甘くない。こんなことができるはずないと頭ではわかっている。しかし世界平和へと至る道にこういうやり方があったのかと目からウロコが落ちる思いであった。できないのではなく、考えることさえ放棄していた自分に気づかされた。面白さの影に胸に残る強さあたたかさが潜んでいる。まるで影の一軍内閣のようである。
 
(40代女性)
 
 
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