この物語を読み終えて感じたことは、まるで1本の連続ドラマが見ているようで、とても読みやすく目の前に八ヶ岳の自然まで見えてきそうな清々しさを感じた。それは、作品の中に度々登場する見落としてしまいそうな道端に生えている草花や、小鳥のさえずりなどの自然の表現が実に細やかに描かれていたからである。
高原にいるわけではないのに、どこか高原の爽やかな心地よい風を感じることができて、満員電車内にいることをしばし忘れさせてくれた貴重な作品である。この作品の主人公真鍋智也には、遺伝のせいなのかイタコのような不思議な能力を持っていた。
様々な事情から死を考えている人に近づくと胸に衝撃を受けてしまう。その異変に主人公の真鍋智也は戸惑いながらも一生懸命自分にできることをしようともがいていた。そんな真鍋の姿に、人の気持ちをありのままに受け止め、優しく受け入れていく人間の真の強さを感じた。
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誰でも何か壁にぶつかった時には、やまびこ不動産へ依頼したわけあり物件の持主たちのように、心が揺れてしまいどうしても悪い方へと考えを巡らせてしまう。しかも、その土地や建物などに様々な思い出や事情が複雑に絡み合っているので、優しくそっと寄り添う真鍋に傷ついた心は癒されたと思う。
さらに、このやまびこ不動産に集う社員は、みな心優しく気遣いのできる素敵な人達である。そのような素晴らしい人間関係の職場ならば、私も日頃人間関係には悩まされているので、一緒に働いてみたい。なぜなら、同僚のマツジュンが精神的に壊れかけていた様子に気づくと、社員一丸となってマツジュンを支えて助けていくような、心優しい気遣いのできる大人ばかりだからだ。
私の周りには、人の親となった人達はたくさんいるのに、皆自分のことで精一杯のようだ。そのため周りの心の変化まで気付くことはなかなか難しい。さらに、自分の想いをそのまま口にしていまい相手が気付くことにさえ気付かない。
だからこそ、やまびこ不動産の社員のような気遣いのできる大人達という脇役があってこそできた素敵な物語なのかもしれない。また、作品の中に度々登場する”道歌”が、その時々の人々の気持ちや道標になっているようで感動した。
最初に出てきた南部さんの台詞で、《咲くもよし、散るも吉野の山桜、一生は、旅の山路と思うべし、平地は少し、坂道たくさん》。ここにこの作品の道標が示されていたような気がする。私はこの言葉に出会って、主人公の真鍋のように生きることへの希望を持ち続けていけそうに思えた。私に生きる力を授けてくれた作品に感謝する。
(40代女性)
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