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読書感想文「謀将北条早雲(南原幹雄)」

伊勢新九郎(以後新九郎という)が備中から室町幕府の京都にあがり、その後戦国大名の先駆け、下剋上を実行した最初の大名として伊豆、小田原に進出、最後は小田原城主となり、名前も北条早雲と改め、相模の国を支配しようとしたところまでを描いた一大歴史絵巻。
 
部下が彼の戦略や作戦を目の当たりにして、「新九郎様は参謀役があってる」と言ったが、それにとどまらず自ら戦いを引っ張った大将として敵を倒す様は、まさに智謀と勇敢な実行力をもった乱世の人物として非常に魅力がある。
 
必要な時は、敵の仲間割れを画策、必要とあれば2年、3年を時期をまつ周到さは、まさに現代のビジネス界の競争や処世術にもつながるものだ。小鹿範満や茶々丸との長年にわたる死闘は、お互いの生き残りをかけた死闘であり、勝てば官軍、別の言い方をすれば「力こそ正義である」ことを見せつけた。
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私は神奈川県の西部に生まれ、半世紀前に小田原城の近くの高校に通った。地元では昔からNHKの大河ドラマに「北条早雲」を希望する声が強く、推進母体もできている。しかし実現しない理由として、新九郎の出自や行動の記録に諸説あること、彼の行動が室町幕府の意向をふんだもので、彼の独断で進めたものでない、等々言われている。
 
しかしそれらを割り引いたとしても、昔からの6人の仲間と自分の知力でのしあっがていった実績はもっと高く評価されるべきだ。この本を読んで改めてその気持ちを強くした。家督を長男の氏綱に譲り、まもなく死去するが、その間の描写がされていればもっと早雲の人柄が浮き彫りにされたと少し残念な気がする。雪舟との交流を通じて、新九郎の教養人としての一面が描かれており、晩年になって心境はどうであったか興味深いものがある。
 
異母姉の北川殿との幼少のころからの付き合い、男女の関係、そして病に倒れた姉との別れは、戦いに明け暮れた新九郎の人生に、伊吹の存在とともに、一筋の憩いの光を与えたのではなかろうか。早雲が死去したあと氏綱以降5代続いたが、この「北条5代」についての本も読みたいと感じた。
 
(60代男性)
 
 
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