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読書感想文「泣かない女はいない(長嶋有)」

タイトルにあるように、泣かない女が泣く話である。「泣かない」というよりは「泣いたことが無い」という意味合い。どこにでもいそうな普通の女性の日常が淡々と語られ、最後は失恋して泣いたというストーリーである。
 
読み進めていくうちに、じわじわと共感していく。主人公の女性は「私は泣いたことが無い」と気づくのだが、これは彼女が、どちらかといえば論理的な思考の持ち主だからだ。私自身がそうなので、とても身につまされる思いで読んだ。
 
こういう性格の人は、ある程度の年齢になれば、「泣く」という感情的な行動をとることが殆ど無くなる。ただし、もちろん感情が無いわけではなく、他人に対して親愛の情を抱いたり、心配したり、自己嫌悪したり…。ただ、あまり表情に出ないというか、外に向けて表現しなくなってしまうだけである。
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特に職場など、「大人」として生きなければならない環境なら当たり前だと言える。主人公の女性は「仙人様」とあだ名をつけられるくらいのレベルなので、相当すごい。そんな彼女が、職場で出来た好きな人に失恋して、初めて泣くことになる。論理的な思考や行動を、ぶち破るのは、やはり恋愛なのだなぁとしみじみ感じる。
 
失恋した、しかも、消化不良な感じの悔いの残る不発な失恋という終わり方は、本当にやり切れない。どこに、どのように自分の感情を持っていいか、整理しきれず泣いてしまう。あらためて、感情があふれることの素晴らしさを実感した。まぁ「失恋」なので、悲しいことなのだけれど、ふだんの日常生活では、気づかないうちに論理や合理で物事を推し進めるようになってしまうので、時々自分の本心や素直な感情がぼやけてしまうのだ。
 
義務や立場、秩序で動いてしまうのだ。それは必要なことだけど、「人生」という気がしない。そんな中、恋愛によって、強引に自分の本心を揺さぶられる。恋に落ちることは、本当に素敵なことであり、貴重なことである。悲しくても、うれしくても、感情が揺さぶられるような一瞬が人生を豊かにしてくれるのである。私は、年齢的にはもう「いい大人」だけど、たまには思い切り泣きたい。
 
(40代女性)
 
 
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