読書感想文「ドグラ・マグラ(夢野久作)」

この本を最初に読んだ時の感想は、訳が分からないというものだった。もちろんいい意味である。終わっているようで終わっていない、驚きとも感動ともいえない、独特の味を見事に残した小説だと私はこれを読んで感じた。それゆえに大きな衝撃を受けた小説である。

 

この小説は何も解決していない。何も分からないまま終わってしまう。肝心の主人公の名前を思い出すどころか、博士の死や若林という男についても何一つ解決していないのである。しかし、何も分からないのにこの小説は面白いのだ。なぜそんな小説が面白いのかを問われると難しいが、これを読み終わった後途轍もない力で押されたような衝撃を受けた。

 

そして、ジワジワとあれは何だったんだ?なんかトンデモナイ話をみたぞというドキドキ感が来たのを覚えている。もしかしたら、そのドキドキ感が面白いのかもしれない。本当に主人公は殺人をしてしまった青年なのか?博士は自殺なのか他殺なのか?巻物を渡したのは誰なんだ?隣の少女は…などの残された疑問が余韻を引いているのかもしれない。

 

主人公の思いに共感した!やここが感動する!などの具体的な点を示すことのできない、独特の味がこの小説の中に漂っているのだと私は思っている。流石は三大奇書の一つであると拍手を贈りたくなる程訳が分からない小説だ。そして内容も非常に難しい。

 

特に阿呆陀羅経と二つの論文は夢野久作さんの頭の良さに感服するのと同時に凡人では理解ができんと文句の言いたくなる程の難しさだ(私はこの小説を二回読んだがあとで大切になる内容を含んでいると分かっていても読むのは苦しかった)。

 

しかし、わたしはこの論文があるからこそ最後がより引き立つのであると思う。過去も現在もなにも分からなくなる最後を見事に彩るのに、理解のできる論文だと面白くないのだ。訳の分からない混沌と狂気の最後には欠かせないものであると私は思っている。そして、そこにもまた魅入ってしまうのである。

 

あのドロドロとした狂気や思惑、その人物の一言の重みや感情、そしてあの突き放すようなラストなど、この小説は耽美的でグロテスクなんだけれどもどこか美しく綺麗で、内に秘められている狂気も何となくだか自身の中にあるように思ってしまう。何かを得ることが出来たかというと何もない。ただ感じたのは訳の分からないこの小説の独特の世界観に魅入ってしまったことである。

 

全ての謎が解ける事が面白く起承転結、物語の波があり伝えたい事もハッキリしている小説が好きな人も多いと思う。私もそうだった。しかし、この小説を読んでからは分からない世界の方に魅力を感じてしまったのである。それゆえに、この本は私の1番お気に入りの本である。

 

(20代女性)

 

 

 

ドグラ・マグラ(上) (角川文庫)
夢野 久作
角川書店 (1976-10-13)
売り上げランキング: 17,200

 

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