めぐりあい。それは、人生の中で繰り返される出来事のひとつだ。めぐり合う人、モノ、出来事、それは私達の生涯を様々に彩る。この本はまさに、めぐりあいの話しなのだ。
主人公の富治の一生に出会う様々な人や出来事を見事に描ききっている。出会う人やモノで私達の人生は大きく変わる。小さなことでも常に選択の連続だ。それを自問自答しながら生きている。正しいと思えたこともあるし、そうじゃなかったこともある。ただ、それは人生という流れで常に変化しているだろう。
そして、人ひとりの存在や考え、つまり私がこうして感じていることは、自然のなかではほんの小さな一部にしかすぎない。偶然のような必然で構成される、人生の素晴らしさ、自然、この世に生ける全てへの畏敬の念を感じずにはいられない本だ。どんな境遇でも、寡黙に諦めず進む主人公の姿に心惹かれる。読み進めるたびに、彼と同化し、何もかもが目の前にあるように感じてくる。私の気持ちはもう彼そのものなのだ。
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作中で、私は彼になり、山を走り、自然の息吹に耳を済まし、深呼吸をし、獲物を捉える。そして、人を愛することを知り、生きる喜びを知る。だか、その愛を失い現実を目の当たりにし、それでも、強く生きていくのだ。己が進むべき道を定め、己の道を貫く。理不尽なことや、困難ばかりが彼を襲い、恵まれてないかのようにすら思えてしまう人生。
でも、どんな時も決して諦めない不屈の精神。芯はぶれずに、しかし己が与られた環境で柔らかに生きる姿勢。それは、現代の私達が忘れかけているものではないだろうか。そして、生きて行く中で大切にしなければいけないことではないか、と私は改めて思った。
人生はいつも自分の手で切り開くことができるのだ。富治の生きる姿を通し、自分がそんなふうに生きていく糧、つまり心の糧を得られることが、人にとっての幸せなのではないかと感じずにはいられない。どんな時も、人やモノ、出来事、そう自分がめぐりあうものにきちんと向き合いながら大切にしたい。そこから、生きる指針が現れるはずだと思いたい。
ふと人生に迷った時、この本は私にはそんな意味にも受け取れた。私は、この本にめぐりあえたことがとても嬉しい。
(30代女性)
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