読書感想文「黒い雨(井伏鱒二)」

この本の最初のページに、黒い雨とは原子爆弾投下後に降る原子爆弾炸裂時の泥やほこりすすなどを含んだ重油のような雨で、放射性降下物の1つであるという説明がある。この説明だけでも怖いという思いをした。戦争ことを全く知らない私にとって、この本は戦争を知る為の1つであると思う。

 

今でも病気に対してのケアの遅れや偏見は多い。また70年以上たった今でも、原子爆弾の後遺症で苦しむ人がいる。この小説のように、原子爆弾でその場で死ぬ事はなくても、被爆を理由に苦しんだり、人生の全てが狂ってしまう人がいると思うと、ただ戦争は怖い、原子爆弾は怖いという言葉では表せないと感じた。

 

この小説では初めて知った言葉もある。この小説の夫婦の姪が浴びたという残留放射能である。この小説を読む前も、直接原子爆弾の投下された場所にいなくても、放射能を浴びて被爆するという事は知っていた。しかし、残留放射能という言葉を見ると、より原子爆弾がもたらす被害の大きさや強さをわかったように思う。

 

 

 

戦争から何十年と過ぎた現代だから、放射能の影響でどういう症状が出るとか、黒い雨は浴びてはいけないなどとわかる事は多い。しかし、当時の日本にとっては原子爆弾の投下だけでも何が起きたのかわからないままに亡くなった人も多い。黒い雨の降る理由も黒い雨の影響も何もわからず、正確な情報もなかったと思うと、ただひたすら恐怖と戦っていたのだと思う。

 

その恐怖から被爆に対する嘘や勝手な噂を作り出したと思うと、とても悲しい事だと思う。被害者の後遺症の症状はわからない。しかし、この小説の夫婦や姪のように外見は元気そうに見えると被爆で苦しんでいる事は他人からは理解できないと思う。その為にどれだけの辛い思いがあるかは、私には全くわからないと感じた。

 

現代の不況の中、経済的な不安や子育ての心配、細かいトラブルなど色々な問題がある。しかし、この小説を読むと私がこの程度の問題で悩むだけですんでいるのは、多くの人の犠牲があったからなんだと強く感じた。色々な問題はあるけど、平和に元気で生きているのだからいいなと思う。

 

(40代女性)

 

 

 

 

 

 

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