死それぞれの重さは変わらないのに、扱いが違うのはなぜだろうか?故人を偲ぶ時に本当に必要なものは何だろうか?私たちの中にいる、その死すら顧みられない人は、本当にその仕打ちに値するような人間なのだろうか?物語には、読者にむかって、このような疑問が投げかけられているように思う。
友人の死を、仕事に追われていたために、ついうっかり忘れていたという罪悪感から、主人公の男は全国各地で亡くなった人を弔って周るという、終わりもなく、途方もない旅を続けている。事故に遭った者、犯罪に巻き込まれた者、家族に看取られた者。多くの人にその死が嘆かれた者。その反対に、誰からも死の事実にさえ気づかれない者。
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誰の死をも、平等に悼む主人公に対しては、賛否両論があり、偽善者だと罵られたり、遺族からは歓迎され故人について、どうか忘れないでほしいと懇願されたりする。誰にでも必ず平等に訪れはずの死には、現実問題として軽重の差がある。多くの人に悲しまれる人もいれば、殺されて当然と嘲られる人もいる。主人公は、どうすれば、誰であっても平等に個人を弔えるかを考えた。
そして彼は、死者のことを想う時には、その人が「どんな原因」で死んだのか、どんな「過去を持っていたのか」という事柄は重要ではないという結論に至った。大切なのは「誰を愛したか。誰に愛されたか。どんなことで人に感謝されたか」ということだけなのだ。そうすることで、他人の評価を介在することなく、その人の存在そのものを受け入れ、記憶に留めることができるのだ。
たとえ他人に憎まれた人に対しても、折り合いの悪い両親に対してであっても、その人の死の原因や他人の評価を詮索するようなことは無用である。死者に対する弔いは、母親が赤子に向ける慈しみの眼差し、想いだけで十分なのだ。神のような至高の愛を実践する方法を、この物語を通じて、作者はそう伝えているように思う。死と愛という人類にとって普遍的なテーマを根底に据えた物語なのだ。
(30代女性)
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