読書感想文「雲を斬る(池永陽)」

私はあんまり時代劇小説を読まないのだが、この作品はかなり読みやすかった。というのも、のっけから主人公のいい年こいた独身オッサン浪人が、今日のめしに困っている図から始まるくらい、なんだかやたらと飲食の描写が丁寧で、ほぼ毎回何かしらものを食べているシーンが出てくることに興味深かったからだ。
 
お話の大筋としては腕の立つ剣客であるが故に、仇討ちのために藩からほっぽりだされ浪人になってしまった武士が、その剣腕によって色々な人情話に関わって、斬ったり張ったり斬らなかったりという短編オムニバスである。
 
その話の中で、なぜか空を飛ぼうとする青年が出てきたりして妙なアクセントを生んでいるのだけれど、とにかく食事シーンが美味そうで毎回出てくるので楽しみの一つにすらなっている。
 

 
 
短編オムニバスの定番として「どんな事件が今回は飛び込んで来るか」という楽しみがまずあり、次に剣劇などのバトル要素がある作品は「どうやって敵を倒すか」という楽しみがあるのだけれど、この作品は色恋沙汰や人情話を期待するのと一緒のレベルで、食べ物描写に期待が持てるというのが面白い。
 
最初の話は大根めし。そもそも、このオッサン浪人、本当に喰うに困っていて「親父の仇より明日のめし」に頭を悩ませ、それがテーマとなっている節もあるくらい日々の生活や日常の平穏さというものの大切さをそこはかとなく、押しつけがましくない程度に演出している。
 
剣撃バトルとしても面白い。時代考証をぶっちぎる所は清々しく粉砕しているのも、かえって興味がわいた。読んでいるだけで楽しい気持ちにさせてくれる。
 
 
(30代男性)
 
 
 
 

雲を斬る
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池永 陽
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